『フラッシュ』シーズン4感想・評価|ラルフ最高!ハリー戻って!
シーズン5の面白さで盛り返したみたいなコメントをチラホラ見かけたので、じゃあシーズン4はつまらないってこと? と疑っていましたが普通に面白かったです。
めずらしくタイムトラベルがほぼ関わらないシーズンで、故に複雑な因縁も少なく、ここにきて初めてプレーンな「フラッシュの事件簿」的アプローチだったのが逆に新鮮でした。
かといって退屈ということはなく、各キャラクターの心情の掘り下げ方や活躍のさせ方も円熟味が増してきていて満足のいくシーズンでした。
©The Flash/DC Entertainment/Warner Bros. Television/Berlanti Productions
あらすじ
シーズン3のラストで、これまでのツケを支払わされる形でスピードフォースに閉じ込められることになったフラッシュ/バリー・アレン。
残された仲間たちはアイリスをリーダーとして街を守り続けていましたが、バリー抜きでの活動に限界を感じ始めていました。
シスコのアイデアによりついにバリーが帰還しますが、彼は謎の言語を話し、認知症のような状態に陥っていました。
その症状はすぐに収まりますが、バリーが戻った際にダークマターが発生し、新たなメタヒューマンたちが誕生したことが発覚。
さらに、サビターらがいずれ現れる強敵として口にした「デヴォー」が、彼らを利用した何かを企んでいることが明らかになっていきます。
※ネタバレ注意
感想
前シーズンのラストがせつなかったので、バリーが帰ってきたのがすごく嬉しい!
嬉しいんだけど、ずいぶんあっさり帰ってきたな(笑)
作中時間でも姿を消していたのは半年だけらしいし。
バリーを帰還させた方法は、シスコが作った装置をバリーだと、スピードフォースに「錯覚させる」というもの。
バリーがスピードフォースに閉じ込められたのは、誰かがそれをやらないと世界のバランスが崩壊するからだと理解していましたが、そうでもなかったっぽい?
それとも、後々またツケを払わされるのでしょうか。
どっちにしても、ほとんど禁忌に近い「科学のごり押し」で神秘的な力に対処するというのはちょっとロマンがあるので、ご都合展開とはいえ嫌いではないです。
その後のバリーの謎の症状もすぐに完治し、ケイトリンもチームに戻ってきて、仲間たちはほぼ元通りになるのでした。
さらに今回、前シーズンのレギュラーだったジュリアン(マルフォイ)がいなくなった代わりに、新たなレギュラー、エロンゲイテッドマン/ラルフ・ディブニーが加わります。
彼を取り巻くドラマがすごくよかったです。
ラルフは科学捜査班におけるバリーの元先輩で、犯人を逮捕するために証拠を捏造し、バリーに告発されて解雇されたという過去があります。
故にバリーとは犬猿の仲でしたが、メタヒューマンとなり伸縮自在の身体を手に入れたラルフは、ヒーローとしてバリーに鍛えられることになり、少しずつ彼と和解し、人間的にも成長していきます。
バリーとの様々な対立とそこから友情を深めていく過程が、うまい具合にどちらにも感情移入できるバランスのとれたものとなっていて秀逸でした。
お調子者で憎めない性格をしており、人間らしい姑息さを持つが正義感と優しさも秘めているというラルフのキャラクター自体も魅力的でした。
バリーが警察を無期限停職になった際、彼が無職という肩書きにならないように、自分の探偵事務所に属する名刺を作っておいたシーンなんてかなり粋で感動しました。
この二人の友情は今後もずっと続いて欲しいです。
今回のメインヴィラン、シンカー/クリフォード・デヴォーもなかなか興味深いキャラクターでした。
自らが開発したシンキング・キャップを介してダークマターを取り込んだ彼は、圧倒的な頭脳を誇り、策略を駆使してフラッシュを翻弄します。
スピードスターではなく、(途中で他者の能力を吸収しますが)厳密にはメタヒューマンでさえない者がラスボスというのは新鮮でしたし、元が一介の大学教授という設定も、スマートに計画を遂行していく様子も好みでした。
また、見方によってはとんでもなくかわいそうだったサビターと比べて、シンカーは邪悪さと不快感の塊で、倒してスッキリできる悪役というのもポイントが高かったです。
その目的は、人類の知能をリセットし、自らが再教育を施すことで、テクノロジーのない平和な世界をもたらすこと。
しかし、機械的な演算能力が突出した代わりに人の感情を理解できなくなった彼は、結局、それが敗因で敗れるのでした。
さて、僕は一番好きなシスコの次にウェルズが好きなんですが、シーズン2以降、どのアースのウェルズも数話遅れて登場するので、ひょっとしてもう出てこないのかといつもヒヤヒヤしてしまいます。
今回も心配していましたが、しっかり出てくれてよかったです。
シーズン1ではアース1のハリソン・ウェルズに成り代わったイオバード・ソーン、シーズン2ではアース2のハリー・ウェルズ、シーズン3ではアース19のHR・ウェルズが登場しましたが、今回のレギュラーは再びハリーでした。
きっちり毎回違うウェルズだとちょっと作為的な感じがするので、次に出るならまたハリーかなと希望的な予測をしていましたが当たってよかったです。
今回のハリーの役割はデヴォーとの対比だったように思います。
天才的な頭脳を持つ代わりに人間性に問題があるハリー、その歪なバランスをさらに極端にしたデヴォー。
この二人が別々の結末にたどり着くというのが、今シーズンの肝の一つなのではないでしょうか。
終盤、ハリーはデヴォーを倒すために自らもシンキング・キャップを被り、その副作用で知能が著しく低下してしまいます。
最終的には治療されますが、かつてのような天才的頭脳までは戻ってきませんでした。
しかし、この結果が自分に人間性をもたらし、知性とのバランスをとることができたと語り、ハリーは喜んで娘のいる次元へと帰っていくのでした。
個人的にはこの結末はちょっと気に入らないかも。
疑問に思ったのは、知能が下がることで人間性を得るという変化が果たして建設的な成長なのかという点。
知能が高い人ほどコミュニケーション能力が低いという研究結果は実際あるそうですが、だからといって、知能と人間性は完全に反比例するわけではなく、高い知能を保ったまま人間性を高めることもある程度可能なはずです。
別にアインシュタインやスティーブン・ホーキングが超独りよがりな人ってこともないだろうし。
ハリーもシスコたちとの交流で少しずつ成長しつつあったのに、それが結局、アクシデントによって知性を代償にして人間性を手に入れるというのはなんか釈然としない……。
まあ、そういう結果を受け入れられるようになったことこそが成長、という風に捉えればいい……のかもね?
ハリーは実は完治していて、天才じゃなくなったのは演技だという説があるそうですが、僕はそれを推したいです。
今回、リーダーとなってチームのために頑張るアイリスがかなり好印象でした。
司令塔に収まることで、恋愛以外のポジションもようやく確立した感じ。
デヴォーの情報を公開し、注意喚起するという形で、ジャーナリストとしての彼女の思想がようやく街を守ることに繋がったのもよかったです。
まあ、その時点でのデヴォーは変身できるんで効果があったのかは微妙ですけど、そこはご愛敬。
まとめと補足
ラルフのヒーローとしての成長、ハリーとデヴォーの対比の2つを軸にして、すっきりまとまった良シーズンでした。
前シーズンも好きですが、サビターが哀れでいたたまれなかったので自分は今シーズンの方が好きです。
おなじみの仲間たちについても、特にギスギスした展開がなく、アットホームな雰囲気を楽しむことができました。
評価:☆☆☆☆(5点満点)
シーズン5についてはこちら↓
『アロー』についてはこちら↓