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『FはFamilyのF』の味わい方を解説!家族は呪縛か?それとも?

今回は、Netflixで配信されているアニメ『FはFamilyのF』の魅力や見所について解説します。

この作品に興味がある方など、味わい方の参考としてお役立てください。

 

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©Wild West Television/Loner Productions/Big Jump Productions/King of France Productions/Gaumont International Television/Gaumont Animation/Netflix

 

概要

Netflixオリジナルのコメディアニメーション。

現在シーズン3までが配信中。

 

あらすじ

1970年代、アメリカ・ペンシルバニア

かつてパイロットを志したが、朝鮮戦争への出兵により夢をあきらめたフランク・マーフィーは、皮肉にも空港の手荷物係として働いていた。

癇癪持ちの彼は、一癖ある同僚や隣人、そして家族に囲まれながら、今日もやるせない毎日に怒鳴り声を上げつつ、現状を打開しようとするのだった。

 

アメリカの闇と光とノスタルジー

数々の大人向けアニメの例に漏れず、本作も非常に社会派です。

雇用問題、差別問題、そして帰還兵の問題など、様々な社会問題が取り上げられています。

さて、本作の舞台は1970年代のアメリ

ベトナム戦争ウォーターゲート事件オイルショックなどに象徴される社会不安の時代です。

まあ厳密にいえば「社会不安の時代」と呼べない時代なんて存在しないと思うのですが、それでも現在の「何が問題で何が敵なのかすら掴めない超混沌状態」とは異なり、「闇の核」みたいなものがある程度わかりやすい時代だと思います。

その「闇の核」をなんとなく感じながら、アメリカを中心とした現代社会の問題の源流を振り返ることができるのが本作の特徴だと思います。

また、少し前の50年代や60年代に各種の人権運動が台頭してきたばかりで、まだ平等に対する意識などが希薄な時代でもあり、逆に、実生活そのものはパッと見る分には現在とそこまで変わらない時代でもあると思います。

その二つの特徴が同居していることによって、旧世代の悪しき風潮が浮き彫りになっているのも、70年代が舞台であるが故の面白さだと思います。

もちろん、70年代の悪い面ばかりを用いているわけではなく、「古き良き時代」らしい勢いや大らかさなどの良い面も楽しむことができます。

アメリカ人ではなく70年代を生きたわけではない僕でも、ノスタルジーを感じることができました。

 

家族という重荷と愛

本作のオープニングは、主人公のマーフィーが卒業式用の帽子とガウンを脱ぎ捨て、気持ちよさそうに社会という大空に羽ばたいた矢先、徴兵にぶち当たり、結婚と子供にぶち当たり、最後には本作のタイトルロゴでもあるFamilyの「F」の字に頭をぶつけ、現在の我が家に落下するというものです

このことからもわかるように、マーフィーは戦争と家庭という障害の出現によって、夢を奪われ、やるせない毎日に縛りつけられました。

しかし、マーフィーは一方的な被害者では決してありません

彼も家族から何かを奪い、家族を縛りつけており、そこが皮肉になっています。

思い通りの人生を送れない不満から常にイラついており、亭主関白の古い男でもあるマーフィーは、暴力こそ振るわないものの、家族に大して非常に支配的です。

妻のスーが働くことをよく思っておらず、長男のケヴィンの反抗的な態度とは常に衝突しており、次男のビルの気の弱さを咎めています。

末っ子のモーリーンのことは溺愛していますが、これは彼女の自主性が最初から眼中にないからです。

しかし、そんな歪な関係の中にもきちんと不器用な愛は溢れており、ストーリーを追うごとに彼らは少しずつ歩み寄り、変化していきます。

家庭とは、何かがうまくいかない場所。

本作はその前提を受け入れた上で、家族の温かさを再発見するハートフルなアニメといえると思います。

 

海外アニメ入門に最適かも

本作はひょっとしたら海外の大人向けアニメをあまり見ない・好きではない人の入門にうってつけかもしれません。

ブラックなネタはもちろん豊富ですが、ゴア表現はほとんどなく、絵柄もさっぱりしていてわりとかわいいです。

また、設定の息苦しさもコメディ要素によってほとんど気になりません。

受けつけないようなシーンが絶対ないとは保証できませんが、全年齢向けのアニメに飽きてきたけど、あんまりドギツいのも嫌だなあという方には最適かもしれません。