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ペンギンの魅力に酔いしれろ!ドラマ『ゴッサム』の味わい方を解説

たまにはマニアックすぎない記事を書こう! ということで、話題の海外ドラマ『ゴッサム』についてまとめてみました。

本当に基礎の基礎から解説するので、『ゴッサム』に興味がある人や、これから視聴しようとしている人が、手軽に本編を楽しむための一助となれば幸いです。

 

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©Gotham/Primrose Hill Productions/DC Entertainment/Warner Bros. Television

 

 ※この記事は2016年7月11日に旧ブログに投稿したエントリーの再掲です。

 

主役はゴードン

本作はアメリカンコミック『バットマン』のスピンオフであり、まだバットマンが存在していないゴッサムシティが描かれます。

主役はバットマンの正体を知らないながらも、長年彼の盟友・理解者として共に戦ってきたジェームズ・ゴードンことジム・ゴードン刑事

原作や映画での彼がだいたい50代くらいの中年で登場することが多いのに対し、このドラマではおおよそ30代ほどの若いゴードンが活躍します。

一方、バットマンことブルース・ウェインはまだ年端も行かぬ少年として登場。

要するに『ゴッサム』はバットマン』の前日譚なのです。

 

ダークナイト』とは繋がっていない

よくこのドラマの紹介で「あの『ダークナイト』のゴードン刑事が主役」というように言われたりしますが、より正確には「『ダークナイト』で有名になったゴードン刑事が主役」。

ゴッサム』と映画『ダークナイト』三部作の世界観は繋がっていません。

つまりゴッサム』から見始めても何の問題もないわけです。

(どちらかというと、ティム・バートン監督による旧実写映画シリーズに近い、ゴシックな色合いの方が濃く受け継がれている気がします。)

また、先日公開された『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』も本作との関わりはありません。

同じDCコミックス原作のドラマである『アロー』や『フラッシュ』とも今のところ共演の予定はなく、仮にあるとしても、フラッシュが「過去」ではなく「別の次元」に渡るという形でしか実現不可能だと思われます。

現段階では完全に独立した作品なのです。

ちなみに『ダークナイト ライジング』の公開前から、『ダークナイト』の続編は『ゴッサム』というタイトルになるのではないか、という噂が一部で流れていました。

フタを開けてみれば『ゴッサム』はテレビドラマ企画だったわけですが、タイミングを逆算すると、『ダークナイト』の大成功を受けて本作の製作が発案・決定された可能性は大いにあります。

 

ゴッサムってどんなところ? 神の消えた街の観光ツアー

タイトルにもなっている「ゴッサム・シティ」は、主に『バットマン』本編の舞台となる犯罪都市です。

暗く湿った雰囲気で、イギリスっぽく感じる方もいるのではないかなと思いますが、アメリカの街です。

実際には存在しません。

ゴッサムの特徴を一言で表すならば、汚職と腐敗の温床」

ここではマフィアによる恐喝や買収によって、多くの警官や議員が犯罪者の側になびいており、司法がほぼ機能していません。

世紀末とまではいきませんが、とても平和とはいえない土地です。

ダークナイト』を見た方は、イタリア系、チェチェン系、中国系など、様々なマフィアが幅を利かせていたことを覚えていると思います。

彼らのような、通常のやり方では手を出せない犯罪者たちを捕まえるために、司法を超えて動きだした存在が「バットマン」なのです。

しかしすでに書いたとおり、『ゴッサム』ではまだバットマンは誕生していません。

代わりに彼らと渡り合わなければならないのは、若き日のジム・ゴードン刑事。

ゴードンは熱い正義漢ですが理想主義者ではなく、現実的な対抗策として、ある程度は清濁併せ呑むスタイルで犯罪と戦います。

 

ヴィランたちの初期微動におののけ!

バットマンが基本的にゴッサムの「ご当地ヒーロー」であるのと同じく、彼と敵対するヴィラン(悪役)たちの多くも、主にゴッサム市内で活動をします。

中東系のラーズ・アル・グール、南米系のベインなどもいますが、だいたいのメジャーなヴィランは、ゴッサムで生まれ育ったり職に就いたりしていると予測されます。

ということは、彼らはこのドラマの時点でも『ゴッサム』のどこかに存在しており、本作では青年期のゴードン、少年期のブルース(バットマン)だけでなく、ヴィランたちの過去も描かれるのです。

すでにジョーカーのような大御所中の大御所はもちろん、ハッシュ、ドールメイカーのような比較的最近のキャラクターに至るまで、様々なヴィランが登場し、ないしは言及され、ところどころに未来への伏線が張り巡らされています。

しかもよくある「それとなく匂わせる手法」ではなく、思いっきりわかりやすく演出するのがこのドラマの特徴。

すなわち、ヴィランたちの在りようが原作本編に近づいてゆく様子を観察することも、このドラマの楽しみ方なのです。

中でもレギュラーとして登場するのが、後の

 

「ペンギン」=オズワルド・コブルポット

キャットウーマン」=セリーナ・カイル

リドラー」=エドワード・ニグマ

 

の三人。

いずれコブルポットは暗黒街の王に、セリーナはバットマンの敵にも味方にもつく盗賊に、ニグマは謎々を用いた快楽犯罪者となります。

特にオズワルド・コブルポットの活躍はもう一人の主役級といっても過言ではなく、ペンギンファンの僕は正直、狂喜乱舞しております。

いつかバットマンの前に立ちふさがる彼らが、いかにして名を上げ、いかにして壊れていったのか

その過程の見せ方が非常に面白く、原作や映画でキャラクターに馴染みのない人でも間違いなく楽しめるはずです。

 

原作と差異もある

原作との関係性を楽しむのが見方の一つではありますが、多くのアメコミ世界と同じく、『ゴッサム』も厳密にはパラレルワールドです。

特に、予想を裏切ることそのものが様式美となっているテレビシリーズの性質上、綿密に折り重なる原作の設定と矛盾を生じさせないことは不可能だと言い切れます。

年齢設定においても、例えばゴードンの相棒・ハーヴィ・ブロック刑事はこのドラマではゴードンの先輩ですが、原作では年下の部下ですし、そもそも後のヴィランたちも、このままだとブルースがバットマンとして成熟する頃にはほとんどが初老にさしかかってしまいます(ペンギンはそれでもいいけど)。

よって過去編といえども、細かいデータを参照するのではなく、バートン版の実写映画、ノーラン版の実写映画、ゲーム、アニメ、そして原作など、複数のパラレルワールドを通した大まかな「イメージ」を以て考えることが、楽しむコツだと僕は思います。

ゴッサム』は前日譚であると共に「新解釈」でもあり、故に原作の設定を知っていても何が起こるのか分からないのです。

 

「裏社会」と「狂気」を楽しむドラマ

もう一人の主役オズワルド・コブルポットは、後に「ペンギン」としてゴッサムの暗黒街を牛耳る男ですが、このドラマではまだまだうら若き下っ端で、そこからじわじわと裏の世界を駆け上がるサクセスストーリーが大きな見所でもあります。

バットマン』のヴィランは、マフィアたちのような月並みの欲望に突き動かされた犯罪者と、ジョーカーやトゥーフェイスリドラーのような信念を動機とする怪人に分けられますが、ペンギンはちょうどその中間に位置する人物です。

地位にこだわり、野心に魅せられるペンギンは一見俗物のようですが、その根底には「他人に認められたい、そのためには何でもする」という強烈なコンプレックスがあります。

大いなる野望を叶えんとする若きコブルポットは、ゴッサムの現在の王カーマイン・ファルコン、新進気鋭のサルバトーレ・マローニ、ファルコンの部下フィッシュ・ムーニーという既存のマフィアたちが繰り広げる勢力図に身一つで飛び込み、それぞれに取り入って利用しつくします。

肉体ではなく知能で戦うというのはペンギンに限った特徴ではありませんが、その変わり身の早さ、洗練された頭脳、そしてジョーカーとはまた違う「弱い(小物の)人間だからこその狂気」には、誰もが虜になるはずです。

また、ペンギンとマフィアが中心に据えられることで、腐敗社会の構造がどうなっているかという「悪徳の世界のネタばらし」を楽しめるのもこのドラマの魅力といえます。

しかし、シーズン1の終盤を境に、マフィアたちの時代にはしだいに影が差し始めています。

腐敗しきった街にバットマンが現れて構造が変わり、やがてトラウマや強迫観念を動機とする狂ったヴィランたちが台頭するのが本来の流れですが、このドラマのゴッサム・シティにはすでに多くの怪人物が現れ始めており、もっと早く狂気の街となりそうな印象を受けるのです。

混沌と化してゆくゴッサムで、特殊なポジションにいるペンギンは、そしてゴードンは、それぞれどのように対応し、どのような決断を導き出すのか。

今後も目が離せません。

 

 第1話の感想はこちら↓

lovecda.hatenablog.com