スタイルを賭けた戦い『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』感想
©テレコム・アニメーションフィルム/小池健/モンキー・パンチ
概要
監督 小池健
原作 モンキー・パンチ
キャスト
山寺宏一 尾花かんじ
あらすじ
お宝「リトルコメット」を盗むため、東ドロアのマランダ共和国大使館に忍び込んだルパンと次元は、謎の男から狙撃されてしまう。
摘出した弾丸は、以前次元が防げなかった、東ドロアの歌姫・クイーン=マルタ暗殺に使用されたのと同じものだった。
凄腕のスナイパー・ヤエル奥崎に狙われていることを知った次元は、彼と対決することになる。
※この記事は2018年4月1日に旧ブログに投稿したエントリーの再掲です。
感想
僕は初期のシリーズをあまり見たことがないお子様なので、今回の大人向けルパンはなかなか新鮮でした。
いやー、めちゃくちゃかっこいいですねえ。
慣れ合わないアウトローたちの乾いた関係と、そこから織りなされるクールな掛け合いは、まさにハードボイルドといった感じです。
ただ、「これこそが本来の『ルパン三世』」と言い切っていいのかはよくわかりませんけどね。
モンキー・パンチ氏が『トムとジェリー』が原型だとおっしゃる通り、スラップスティックなノリもルパンの重要な要素だとは思います。
しかし、本作公開以前の10年間ばかし、明らかにギャグの量と使い方が過剰な作品が多かったのもたしかだと思うので、ここでガツン! と「ハードボイルドな『ルパン三世』」の一つの完成形を仕上げてみせた意味は大きいと感じます。
個人的な好みとしては、今後もこういうのばっかりを見たいです。
しかし次元ってやっぱ相当かっこいいですよね。
自分的には、日本の漫画・アニメのキャラクターで一番かっこいいかもしれない。
今作は、金でも正義でもなく、次元大介という男のプライドをめぐるお話。
そしてたぶん、ロマンをめぐるお話。
ルパンと次元の共通点とは何かって考えた時に、それはロマンと共に生きていることじゃないかなって思うんですよね。
ルパンの場合、ロマンは「お宝」と「女」、そして「なんでもできる自分(夢を見ない自分)」。
次元の場合、「スタイル」。
古風なリボルバーへの愛着に代表されるように、自分なりのスタイルを貫くことが次元のロマンであり、その延長線上に、一人の女を守れなかったことへの後味の悪さがあるんだと思います。
そんな次元のスタイル(=ロマン)を、同じくロマンに生きるルパンが最高の形でサポートする。
僕はこの作品をそんな風に捉えました。
強迫的なこだわりを持った、敵のヤエル奥崎も魅力的。
やっぱりこういう癖があるヴィランって必要だと思います。
名前もいい。
「ヤエル奥崎」。
「ヤエル山崎」でも「ノエル奥崎」でもダメ。
声に出して言いたい。
「ヤエル奥崎」。
評価:☆☆☆☆(5点満点)