『グラビティフォールズ』考察|二組の双子の関係とフォードの役割
傑作アニメ『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』の構造を読み解く考察、第1弾です。
今回は、ディッパーとメイベル、スタンフォードとスタンリーという二組の双子の関係性と、スタンフォードが持つ役割について自分の解釈をまとめてみました。
基本的に視聴済の人向けの記事ですが、大まかな概要を知りたい方は第1話の感想にお目通しください↓
二組のミステリーツインズ
このアニメには「ミステリーツインズ」と呼ばれる冒険好きの双子が二組登場します。
まずは、主人公であるディッパー・パインズとメイベル・パインズの双子。
そして、彼らの大叔父であるスタンフォード・パインズとスタンリー・パインズの双子です。
この二組は対比される存在として描かれています。
スタンフォードとスタンリーは元々は大の仲良しでしたが、誤解とすれ違いによって決定的に心が通じなくなってしまったという過去があります。
一方で、ディッパーとメイベルも大の仲良しですが、ディッパーのある選択が、メイベルとの関係に破局の危機をもたらしてしまいます。
これらのことから、かつて「ミステリーツインズ」に起こった悲劇を修正し、また、再び繰り返されることを阻止しようとするお話というのが、『怪奇ゾーン グラビティフォールズ』の本筋の一つであるといえます。
また、各々の性質においても、オタク気質で学者肌のディッパーがスタンフォードと、カリスマ性がありマイペースなメイベルがスタンリーと対応しています。
これらのことから、ディッパーはスタンフォードの分身であり、メイベルはスタンリーの分身であると考えることができます。
スタンフォードのエゴ
次に、スタンフォードとスタンリーの関係が冷え切ることになってしまった原因について読み解いていきます。
きっかけは、スタンリーがスタンフォードの発明品を意図せず破壊してしまい、彼の一流大学への内定を水の泡にしてしまったことです。
スタンフォードは、これを自分たちが離ればなれになることを嫌がるスタンリーの故意的な工作だと思い込み、二人は衝突し、喧嘩別れします。
これだけ書くとスタンリーの責任が強い気がしますが、その後の二人を観察すると、終始、スタンフォードが和解の機会を潰していることがわかります。
スタンフォードがグラビティフォールズの超常現象を研究するようになってからしばらくして、彼はスタンリーを呼び寄せ、自身の研究成果を誰にも見つからない場所に隠すよう頼みます。
この時、スタンリーは仲直りができると期待していました。
しかし、久しぶりの兄弟の再会にも関わらず、スタンフォードは終始ドライな態度をとり、スタンリーを怒らせてしまいます。
©Gravity Falls/Alex Hirsch/Disney Television Animation
そしてスタンリーは、はずみで別次元に通じるゲートを起動し、誤ってスタンフォードを別次元に飛ばしてしまいます。
その後、スタンリーは兄弟を助けるため、スタンフォードとしてグラビティフォールズに留まり、数年後、ついにスタンフォードを呼び戻すことに成功します。
ところが、この時もスタンフォードはもともとの原因がスタンリーにあることにこだわり、彼が半生をかけて自分を救い出したことに礼を述べませんでした。
これによって、二人の関係修復はさらに先延ばしになってしまいました。
また、スタンフォードはもう一組のミステリーツインズにも好ましくない影響を及ぼしています。
自分に似ているディッパーを大いに気に入ったスタンフォードは、12歳のディッパーを、カリフォルニアの学校生活に戻らず、助手としてグラビティフォールズに残るよう提案します。
ディッパーは提案を受け入れ、独りぼっちになってしまうことに心を痛めたメイベルは、ディッパーに怒りと悲しみをぶつけ、家を飛び出してしまいます。
スタンフォードは決して悪人ではありませんし、もちろん最後にはスタンリーと和解するわけですが、こうして振り返ると、彼のデリカシーに欠ける一面が多くのボタンの掛け違いを誘発していたことがわかります。
ちなみに、メイベルはスタンフォードの登場直後から彼がもたらす「何か」を警戒しており、彼女にしては非常にめずらしく、その後もあまり彼に心を開こうとしませんでした。
彼がディッパーを自分の元から連れ去ってしまうかもしれない存在であることを、メイベルは予感していたのだと思われます。