ブラック・ミラー『宇宙船カリスター号』感想|倫理崩壊スペクタクル
やっちまった!
間違えてシーズン4から見てしまった!
オムニバスだからストーリー的には問題ないけど気持ち悪い。
まあいいか。
『宇宙船カリスター号』
©Black Mirror/Zeppotron/House of Tomorrow/Netflix
あらすじ
宇宙の果てを探索する宇宙船カリスター号では、今日も船長のロバート・デイリーが大活躍し、乗組員たちの喝采を受けていた。
しかし、それはゲームの中での話だった。
現実のデイリーは、仮想空間に入り込めるゲーム「スペース・クラフト」を開発した天才ではあったが、手柄は会社の顔のジェームズ・ウォルトンに横取りされている状態で、人付き合いも上手くできず、うだつが上がらない日々を送っていた。
カリスター号の乗組員たちと同じ見た目を持つ同僚たちも、現実ではデイリーに冷たい。
ある日、デイリーは新人社員のナネット・コールにその業績を熱く称賛されるが、その後、彼女に異性としては見られていないことを知る。
デイリーはナネットがコーヒーを飲んだ紙コップから彼女の遺伝子を採取し、自分のゲームの中に彼女を創り出す。
デイリーは気に入らない人間をオフラインの仮想空間にコピーし、絶対的な力により彼らを従わせることで憂さ晴らしをしていたのであった。
真実を知ったナネットのコピーは、彼が支配する空間から逃げ出すために一計を案じる。
感想
序盤はデイリーに同情しました。
何も悪いことしてないのに、怒鳴られて、クスクス笑われて。
「あいつはやめとけ」って横から恋路を邪魔されて。
真実を知ってからは嫌悪感しかなかったですけどね。
個人で妄想しようがそこに知り合いを登場させようが人の勝手だと思いますが、意識と記憶と感情を持った電子クローンを創り出していたぶるってのは極悪非道。
その内容も本当に残酷。
演じるジェシー・プレモンスの憎たらしいサイコパス顔も相まって、なかなかの悪役っぷりでした。
僕はコミュ障の気持ちはがっつりわかりますが、ゲームをあまりやらないこともあってか、こういうことをする彼の心理状態までは共感できませんでした。
自分だったらよっぽどのことをされない限り、手ひどい復讐をするのはかわいそうになるし、罪のない人を巻き込むのは論外だし、無理やり崇めさせるのも本心じゃないからなんの意味もなく感じます。
孤独とそのはけ口としての別世界は、ここまで人を壊すものなのか、それともデイリーが異常なのか。
「ここまでやる奴はまずいない」って考えと「一歩間違えれば彼みたいになり得る人もいなくはないのかも」って考えが両方浮かびます。
ラストで、ナネットたちがオンラインの世界に逃げ出した後、通りすがりのプレイヤーの横暴な態度をナネットは爽やかに無視します。
そしてそのプレイヤーが「(俺は)宇宙の覇者だ」と高らかに叫んでこのお話は幕を閉じます。
このメッセージには、「デイリーみたいなことさえしなければ勝手にはけ口で暴れていればいい」という許容と、「でもデイリーみたいになる危険性も少しはあるからね」という警鐘の両方が含まれている気がしました。
ところで、コピーたちが本当にかわいそうなんですが、自分が本物ではなくコピーであることについてはわりとすんなり受け入れていたり、自由になることと死ぬことが同義でも別段気にしていなかったりと、そこらへんはかなりあっさりしていました。
そういうオムニバスならではのサクサクしたテンポが、息苦しい設定にも関わらず見やすい作品にしていてよかったと思います。
あと、現実では嫌な奴だったウォルトンのコピーの仲間思いな立ち振る舞いや勇気ある行動がかなり好きでした。
世渡り上手のリア充って基本はいけ好かないけど、根っこのところで優しかったりかっこよかったりするんですよね。
だからといってオタクやおとなしい人の方が悪! みたいな極論はありえないですけど。
評価:☆☆☆☆(5点満点)
シーズン1はこちら↓