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『アベンジャーズ/エンドゲーム』の下敷き『アントマン』説|考察・作劇論

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©Ant-man and the Wasp/ Marvel Studios

 

バラエティに富んだ切り口で、スーパーヒーロー映画だけでなく他ジャンルにも分類が可能なMCUの作品群。

アントマン』シリーズはその代表で、コメディ、クライム、ファミリーものの要素を強く持っています。

特に2作目『アントマン&ワスプ』はその色が強いです。

1作目とは違い、悪役らしい悪役は不在で、世界的大惨事が起こる気配もなく、どこか「ヒーロー映画」らしさに欠ける代わりに、徹頭徹尾「家族のお話」であることがメインでした。

このコンセプトはMCUの中でも少し浮いているような気がしましたが、実はその後の『アベンジャーズ/エンドゲーム』の構成とある程度共通していると考えることができます。

『エンドゲーム』もまた、各キャラクターの文字通りの家族、そして「アベンジャーズ」という家族のお話です。

もちろん「ヒーロー映画」でもあるのですが、序盤では時間をかけてじっくりと人間描写が掘り下げられ、中盤からはほとんど戦わない「ミッション」が展開され、終盤になってようやく悪役との本格的バトルが始まるという流れを俯瞰すると、「ヒーロー」というテーマそのものについては深く追及しながらも、構成としては従来の「スーパーヒーロー映画」からかけ離れており、「家族のお話」としての性格の方が強い異色の作品ともいえます。

また、過去に戻ってインフィニティ・ストーンを奪取する「タイム泥棒」という任務も、いかにも『アントマン』っぽいです。

こう考えると、意図してか無意識かはわかりませんが、『エンドゲーム』は『アントマン』シリーズの構成を受け継いで活かしているのかもしれません。

だとすれば、単体作品それぞれのストーリー上の続編というだけでなく、構成上の続編として集合映画を制作することができるMCUの懐の深さと作劇の巧みさに改めて「恐れ入った」と思うのでした。