『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』感想|ほぼ完璧な傑作!
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
©Spider-man:Far From Home/ Columbia Pictures/Marvel Studios/Pascal Pictures
監督:ジョン・ワッツ
キャスト:
ジョン・ファヴロー サミュエル・L・ジャクソン コビー・スマルダーズ etc.
概要
映画作品としてはマーベル・シネマティック・ユニバース第23作目となるスーパーヒーロー映画。
実写映像化の権利を保有するソニー・ピクチャーズとの提携によって実現したマーベル・スタジオ版『スパイダーマン』シリーズの第2作。
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』から続くMCUフェーズ3の最終作。
あらすじ
尊い犠牲によってアベンジャーズがサノスに勝利してから間もない頃。
ピーター・パーカー/スパイダーマンは、夏休み中にサークルで向かうヨーロッパ旅行で、同級生のMJに告白しようと計画を立てていた。
トニー・スターク亡き後のアベンジャーズについてのプレッシャーから逃れ、旅行に集中したいピーターは、ニック・フューリーからの連絡も無視する有様。
しかし、旅行先の一つ・ヴェネツィアが水の怪物(ハイドロマン)の襲撃を受け、ピーターは戦うことを余儀なくされ、苦戦を強いられる。
そこへ突如謎のヒーローが現れ、ピーターと共闘する。
彼の活躍によって怪物は倒され、メディアはヒーローにミステリオと名付けて称賛するのだった。
フューリーに直接呼び出されたピーターは、ミステリオの正体であるクエンティン・ベックと対面し、怪物が異世界からやってきたエレメンタルズと呼ばれる存在の一人であること、ベックの世界が彼らによって滅ぼされたことを知る。
フューリーから、ベックと共に残りのエレメンタルズを討伐するよう任されたピーターはそれを断るが、旅行のルートが不自然な事情で変更され、エレメンタルズが出没する箇所を辿ることになってしまう。
夏休みをフューリーに乗っ取られたことを悟ったピーターは、恋路も片手間に、しぶしぶ任務に加わるのだった。
登場人物
超人的な身体能力や蜘蛛糸を発射できるウェブ・シューターなどを駆使するヒーロー。
中身はうら若き高校生。
『エンドゲーム』でトニー・スタークなどの主要人物が失われたことから、次期アベンジャーズの中心になるのではないかと(作中でも作外でも)注目されている。
トニーの死を悲しむ一方で、プレッシャーに耐え消えれず、プライベートを充実させようとしている。
“I don’t think Tony would have done what he did, if he didn’t know you were going to be here after he was gone.” #SpiderManFarFromHome 7.2.19 pic.twitter.com/ySzLM14iGl
— Spider-Man: Far From Home (@SpiderManMovie) 2019年5月14日
メイ・パーカー(マリサ・トメイ)
ピーターの叔母。
前作ラストのできごとによりピーターの正体を知っている。
ミシェル・ジョーンズ/MJ(ゼンデイヤ)
ピーターの同級生。
変わった観点から物事を捉える頭のいい子。
前作ではピーターを追いかけていたが、今作では逆にピーターに追いかけられている。
.@ColbertLateShow x @Zendaya. Don’t miss it tonight! 🎉 pic.twitter.com/1EFDnq6sYV
— Spider-Man: Far From Home (@SpiderManMovie) 2019年6月25日
ネッド・リーズ(ジェイコブ・バタロン)
ピーターの親友でオタク仲間。
ヨーロッパで現地の女性にモテモテになる計画を立てていたが、サークルのベティと意気投合しイチャつきまくる。
なんだこいつ。
ハロルド・「ハッピー」・ホーガン(ジョン・ファヴロー)
トニー・スタークの元部下の一人で、ピーターとフューリーを繋ぐ存在。
メイ叔母さんといい仲になってしまったようである。
ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)
シールド(戦略国土調停補強配備軍)のエージェント。
エレメンタルズ討伐のため、ピーターの夏休みをハイジャックする。
マリア・ヒル(コビー・スマルダーズ)
フューリーの有能な部下。
久々のまともな登場。
クエンティン・ベック/ミステリオ(ジェイク・ジレンホール)
突如現れた謎の新ヒーロー。
空を自由に飛び回り、手からは光線を出す。
異世界人で、自分の世界をエレメンタルズと呼ばれる怪物たちに滅ぼされたため、この世界で悲劇が繰り返されないようにしているらしい。
先輩ヒーローとしてピーターの良き師となり、アドバイスするが……。
Don't miss #SpiderManFarFromHome's Jake Gyllenhaal on @TheEllenShow today! #MysterioOnEllen 🕷️🎉 pic.twitter.com/tuiQpYbEfg
— Spider-Man: Far From Home (@SpiderManMovie) 2019年5月7日
感想
大いなる責任ときらめく青春
なんとなく思っていた通り、主題はかなりサム・ライミ版『スパイダーマン2』に近かったです。
ヒーローとしての責任と、自分の人生にどう折り合いをつけるか。
スパイダーマンというキャラクターを象徴するようなテーマであると同時に、『アベンジャーズ』シリーズでもずっと描かれてきたテーマなので、フェイズ3最終作にピッタリでした。
今回取り上げられるのは、人生の中でも一際特別な輝きを放つ「青春」。
大好きなあの娘に想いを伝えたい!
一緒に素敵な時間を過ごしたい!
そのためにずっと計画を立ててきたのに、ヒーロー活動に邪魔されてうまくいかない……。
ピーターがそんな状況に悩み、戦うのが本作です。
似たような苦悩は旧シリーズでも描かれましたが、今作では青春がより青春っぽく等身大で描かれており、非常に新鮮な味わいがありました。
友達たちのイチャイチャ、いけ好かない恋敵、好きな娘とのすれ違い、どちらかというとうまくいかないことだらけ、それが青春。
だけど楽しいことだってその中に隠されている、それが青春。
そんな甘酸っぱさを身近に感じるほどに、ヒーロー活動で貴重な一瞬を奪われるピーターが本当にかわいそうになりました。
彼を身勝手だと思う人もいるかもしれませんが、ピーターはまだ子供ですからね。
しかもトニーを失った悲しみや、彼の後釜として後押しされている重圧もあるし、そりゃ逃げ出したくもなるよ。
結局、ピーターはヒーローとしての責任を果たし、悪と戦い、倒すことに成功しますが、今後、彼自身の人生も大切にされ、できることならヒーローと人生が両立されることを祈ります。
難しいだろうけどね。
トニーとキャップは結局両立を成し得なかったから、片方はヒーローとして命を落とし、片方は自分の人生を生きるという極に振った結末に至ったわけですし。
それを思うと、ピーターにどれだけ困難な道のりが待ち受けているのかは想像に難くありません。
負けるなピーター!
MCU次の中心人物は……
今後のMCUの中心が誰になるのかずっと気になっていましたが、今作を見ると、どうやらスパイダーマンで確定っぽいですね。
ハッピーがスーツをデザインするピーターの姿にトニーを重ねるシーンで泣きそうになりましたが、あれはつまり、そういうことでいいんですよね?
ピーターはピーターであって、トニーになろうとすることは本作でやめたわけですが、それでも受け継ぐものは受け継ぎ、かつ今後の主役になるっていう。
前々から次の中心人物と言われていたドクター・ストレンジが、それにしては単独作の製作スパンが長いし。
ソニーとマーベルの提携も、まだまだ続けられそうだし。
恐らく、アベンジャーズのリーダーがキャプテン・アメリカ、物語の中心がアイアンマンだったように、今後のリーダーにはドクター・ストレンジが、物語の中心にはスパイダーマンが収まるような気がします。
『エンドゲーム』での退場劇で大きな穴が空いたMCUですが、人気・知名度・魅力共に超ビッグタイトルである「スパイダーマン」がこれからを引っ張っていってくれるのなら頼もしい限りですね。
いやあそれにしても、トニーがどれだけピーターを大切にしていたのかが全編で伝わってきて本当によかったです。
人工衛星からハイテクドローンを射出したり、他人の個人情報を操作したりできる超技術のサングラスを残していくんだもん。
愛が重いよ(笑)
遊び人の皮を被ったオタクとわかりやすいオタクだからタイプはちょっと違うけれど、根っこのヒーロー気質と科学への情熱がそっくりなピーターに出会えてトニーは嬉しかったんだろうなあ。
ミステリオの狂気
ミステリオについての考察は別記事で詳しく書くので、ここではざっくりとした感想だけ書きます。
それにしても非常に魅力的なヴィランでした。
そう、ヴィランなんです。
みんなわかってたでしょ?
ヴィランです。
悪い奴です。
彼の正体は、『シビル・ウォー』でトニーがプレゼンしていた超高度な立体プロジェクター技術の開発者で、精神異常者としてトニーに解雇された過去を持つこの世界の人間でした。
ベックは自分の技術で架空のヴィランとヒーローを作り出し、自作自演で戦いをでっちあげていたのでした。
いやもう、とんでもないサイコ野郎ですよ。
目的や結末などについてはやはり別記事で掘り下げますが、とにかく素晴らしいキャラクターでした。
また、彼を取り巻くシーンの一つ一つも珠玉のデキでした。
特に中盤の、ミステリオの計画を支えたスタッフの皆さんを称える打ち上げシーンと、長~い幻影を駆使してピーターの心の内を抉り出し、圧倒するシーンが最高。
スーパーパワーも格闘技術も持たず、幻影で戦うというミステリオの良さを、あそこまで完璧に映像化してくれるとは思いませんでした。
感無量。
ただ、クライマックスでも中盤の時のようなサイケデリックな幻影をもう一度見せて欲しかったかなあ。
あと、ピーター以外のキャラクターにも個人的な幻影を見せてもよかったかも。
まだまだ味わい足りないヴィランでした。
(ミステリオの目的などの考察はこちら↓)
まさかのあの人が登場
これがもう本当に一番驚きました。
JJJが!
デイリー・ビューグル編集長にして、スパイダーマン憎しのジャーナリストであるJ・ジョナ・ジェイムソンがラストでまさかまさかの登場!
しかも演じるのはサム・ライミ版と同じJ・K・シモンズ!!
ほえぇ~、こういうことやるんだマーベル!
サム・ライミ版スパイダーマンが大好きなので、恐らく実写シリーズの決定版となるMCU版スパイダーマンにその片鱗が残ることにはなんとも言えない感動があります。
このまま何人か過去シリーズのキャラが出てきてくれたら嬉しいです。
そして、JJJが紹介した映像の中で、ミステリオが「スパイダーマンはピーター・パーカー」という衝撃の事実を公表し、しかもピーターに濡れ衣まで着せて物語は幕を閉じますが、今後の展開やいかに。
個人的には、やはりスパイダーマンは正体を明かさないヒーローであって欲しいので、なんらかの対処でうやむやになって欲しいです。
評価:☆☆☆☆☆(5点満点)