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『シュガー・ラッシュ:オンライン』感想|幻想は終わったの?

シュガー・ラッシュ:オンライン』

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©Ralph Breaks the Internet/Walt Disney Animation Studios/Walt Disney Pictures

 

監督:リッチ・ムーア フィル・ジョンストン

キャスト:

ジョン・C・ライリー サラ・シルバーマン etc.

日本語吹替:

山寺宏一 諸星すみれ etc.

 

概要

ディズニーの長編アニメーション映画(ピクサー映画ではない)。

2012年公開の『シュガー・ラッシュ』の続編。

アーケードゲームの中に生きるキャラクターたちが、今作ではインターネットを舞台にして冒険する。

 

あらすじ

前作から6年後。

レトロゲーム「フィックス・イット・フェリックス」のキャラクター・ラルフと、レースゲーム「シュガー・ラッシュ」のキャラクター・ヴァネロペは、親友となり、毎日一緒に遊んでいた。

ある日ラルフは、同じことを繰り返す毎日に飽き飽きしていたヴァネロペのため、「シュガー・ラッシュ」内に新コースを作る。

ヴァネロペはコースを気に入り大喜びするが、運転がプレイヤーの操作と噛み合わず、結果的に筐体のハンドルを壊してしまう。

自分のゲームが廃棄され、家を失うことを悲しむヴァネロペのため、ラルフは新しいハンドルを手に入れることを決心し、ヴァネロペと共にインターネットの世界へ飛び出す。

 

※ネタバレ注意

 

登場人物

レック・イット・ラルフ

レトロゲーム「フィックス・イット・フェリックス」のキャラクター。

悪役だが実際は心優しく不器用。

 

ヴァネロペ・フォン・シュウィーツ

レースゲーム「シュガー・ラッシュ」のキャラクター。

レースの天才で毒舌家。

 

感想

僕は前作が本当に本当に本当に大好きなんです。

だから今作が前作のアンチテーゼ的な作品になっているのにかなり複雑な思いがありまして、今回はそこらへんについて語ろうと思います。

前作『シュガー・ラッシュ』は、ゲームの設定上悪役でしかない自分にコンプレックスを抱いていたラルフが、独りぼっちのヴァネロペを救い、「例え悪役でも、あの子のヒーローでいられればそれでいい」という答えに到達するお話でした。

今作はその答えに対して、二つの角度から問題提起するお話です。

一つは、「役割と居場所は変えることもできる」という角度。

前作で「俺は悪役でいい」と言い切ったラルフとは異なり、ヴァネロペは「シュガー・ラッシュ」のキャラクター(かつ女王)という自分の役割を放棄し、インターネットの世界で新たな居場所を見つけます。

もう一つは、「あの子がいなくなったらどうするの?」という角度。

さて、前作『シュガー・ラッシュ』の舞台は徹底的に「閉じた」世界でした。

外の世界との繋がりはなく、ゲームの電源が抜かれたり、ゲームセンター自体が閉店してしまえば、それで滅びる非常に脆い世界です。

そんな中で、ラルフはプレイヤー(=人間)ではなく、同じゲームキャラクターであるヴァネロペを救い、彼女だけのヒーローとなります

つまり、人間社会のメタファーでありつつも、根本的なルールや倫理観がまるで異なる世界で全てが完結していたのが前作であり、それ故に、彼らの友情は(世界が滅びるまで)永遠に(大きくは)変化しないものである可能性があったのです

しかし今作では、その見解は否定されます。

紆余曲折を経て二人は離れ離れとなり、ラルフはヴァネロペに依存しない道を進むことになるのです。

前述したような、前作に漂っていた一種の幻想になんともいえない虚無的・退廃的なせつなさと、「二人だけの世界」というロマンを感じ、それが大好きだった僕にとっては、これは好みの展開とはいえませんでした。

ですが、伝えたいことは十分理解できるので、極端に毛嫌いするつもりはありません。

ただ、どうしても引っかかった部分もあります。

それは、今作で否定された幻想には、「変化のない友情」(とそれを押しつけられる「義務としての役割」)だけでなく、「二人の関係性」自体が含まれているという可能性です。

少女であるヴァネロペと冴えないおじさんであるラルフが、べったりと仲睦まじく過ごす姿を、「いつか変化するもの」としてだけでなく「ありえないもの」(ひいては「悪しきもの」)としてディズニーが定義づけ、わざわざ見せつけているのだとしたら……それはちょっといきすぎだと思うんです

ただ、この作品でこのことについて論じるのはやっぱりちょっと考えすぎかもしれないので、別記事でさらに深く掘り下げてみようと思います。

 

評価:☆☆(5点満点)

 

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