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『サブリナ ダーク・アドベンチャー』感想|ポップな闇を楽しめ

『サブリナ ダーク・アドベンチャー』

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©Chilling Adventures of Sabrina/Warner Bros. Television/Netflix

 

概要

アーチー・コミックスの『Chilling Adventures of Sabrina』を原作とした、Netflixオリジナルドラマのダーク・アドベンチャー。

同じくアーチー・コミックスの『Sabrina the Teenage Witch』を原作としたシットコム『サブリナ』のリメイク的な位置づけだが、そもそも原作からして違うバージョンのようで、作風はまったく異なる。

 

あらすじ

サブリナ・スペルマンは、魔術師の父と人間の母を持つ女の子。

両親はすでに他界しており、叔母二人と従兄弟と4人で暮らしている。

16歳の誕生日が近づくサブリナは、彼氏や友達のいる人間界に属するか、彼らと別れて魔術師の世界に属するか選択を迫られていた。

 

登場人物

サブリナ・スペルマン

主人公。

魔術師と人間のハーフ。

家族思いで友達思いな優しい性格。

16歳の誕生日を機に人間の世界と魔術師の世界を選ばされるが、結果的には特例として、人間界のバクスター高校と闇の魔術学院の両方に籍を置くこととなった。

正義感が強く、魔術の世界の理不尽な伝統に対して懐疑的。

そのことと、自身の出自の特殊さが原因となって、様々な陰謀に巻き込まれてゆく。

両親は事故で亡くなったとされているが……。

 

ゼルダ・スペルマン

サブリナとアンブローズの叔母でヒルダの姉。

サブリナの父・エドワードの妹。

旧作ではとにかく優しかったのが印象的だが、今作では打って変わって厳格で保守的。

 

ヒルダ・スペルマン

サブリナとアンブローズの叔母でエドワードとゼルダの妹。

旧作ではエネルギッシュな変人でボケ役を務めることが多かったが、今作では打って変わって気弱で家庭的。

 向かって左からゼルダ、ヒルダ

 

アンブローズ・スペルマン

サブリナの従兄弟。

ゼルダの子でもヒルダの子でもエドワードの子でもないようだが具体的な血縁関係は不明。

過去に大罪を犯したため、自宅に軟禁されている。

魔術に詳しく、よくサブリナの相談相手になる。

 

セイレム

サブリナの使い魔の黒猫。

陽気で喋りまくりだった旧作とは異なりまったく喋らない。

作品の顔だった旧作とは違って出番は多くないが、サブリナのピンチにはいち早く駆け付ける有能。

 

ハービー・キンクル

サブリナのボーイフレンド。

絵の才能があり、ホラー系のアーティストを目指しているが、鉱山労働者の父から反対されている。

子供の頃、鉱山で怪物を見かけたことがあり、トラウマとなっている。

また、魔術師・魔女と敵対するハンターの家系でもある。

 

ロザリンド・ウォーカー

サブリナの友達。

徐々に視力を失っていく家系で、その原因は先祖が魔女に呪いをかけられたからだとされる。

その代わり、未来や遠くのものを見通せる「カニング」という特殊能力を身に着ける。

 

スージー・パトナム

サブリナの友達。

ボーイッシュで、自身の性自認について葛藤している。

途中から男性名として「セオ」と名乗り始める。

 向かって左からロザリンド、ハービー、スージー(セオ)

 

ファウスタス・ブラックウッド

魔術師・魔女たちが属する「夜の教会」の司祭長。

ゴリゴリの伝統主義者にして男性優位主義者。

サタン(ルシファー)とユダを狂信的に崇める一方で、自身のために教義を曲解することも辞さない。

サブリナの父・エドワード・スペルマンの師であったが、ハーフで自分の思い通りにならないサブリナのことは目の敵にしている。

 

プルーデンス・ナイト

夜の教会に属する闇の魔術学院の生徒。

同級生のアガサとドルカスとの三人組でサブリナを虐めるが、利害の一致によって時に協力する。

 向かって左からアガサ、ドルカス、プルーデンス

 

ニコラス・スクラッチ

闇の魔術学院の生徒。

ハンサムな優等生で、サブリナのことを好いている。

 

メアリー・ワードウェル

サブリナたちの通うバクスター高校に務める教師だが、序盤で悪魔リリスに成り代わられる。

サタンのために巧妙にサブリナを操る一方で独自の目的も持つ。

 

サタン

言わずと知れた悪魔(堕天使)の総大将。

魔術師・魔女たちにとっての神であり、単なる偶像ではなく実在している。

サブリナに強い関心を持ち、ある計画を進めている。

 

見所と感想

最初は息苦しいが面白い

あのサブリナがダークになって帰ってきた、ということで楽しみにしていた本作。

なかなか面白かったです。

メインストーリーは、ブラックウッド司祭長率いる「夜の教会」の勢力がサブリナの自由意志を理不尽に奪おうとしたり、サタンがサブリナを手中に収めんとする中で、サブリナが抵抗したり、改革を志したり、家族や友達のために戦って傷ついたりするというもの。

だから正直、最初は息苦しかった。

保守的な叔母のゼルダもある程度協会の方針に協力的なもんだからだいぶモヤモヤさせられました。

ただ、優しいヒルダ叔母さんの存在と、ブラックウッドのナルシシスティックな振る舞い適度なアホっぽさがいいクッションになっていて、窮屈さにはすぐに慣れました。

ゼルダも別に教会に魂を売っているわけではなく、サブリナと教会のどちらをとるのかと訊かれたら100%サブリナをとるので、その家族愛に気がつき、ゼルダを好きになるともうずっと見やすかったですね。

生命が危ぶまれるような出来事が日常的に起こるのもちょっと落ち着かないですが、人間界と死生観が異なることが示されると気にならなくなります。

 

ダークさに大して意味はない

本作における魔術は黒魔術とほぼ同義で、ブラックウッドだけでなく、基本的に魔術師・魔女全員が「サタン様」を崇拝しており、全編に渡ってダークな文化が日常に溶け込んでいます。

作品自体も明らかにそれをウリの一つにしています。

こういうコンセプトの場合、例えばキリスト教の厳格さと対になる自由主義の一端として悪魔崇拝を取り上げ、「闇ならではのよさ」をフィーチャーしそうなもんですが、別にそんなものはありませんでした

崇拝の対象が違うだけで、むしろサタン教の方が厳格で支配的、おまけに残酷。

では、サタンの教えを拡大解釈する教会を正すお話なの? と問われると、そうとも言い切れず、サタン自身も普通に悪しき計略を練っている。

じゃあ、教会にもサタンにも思想的に帰属しない「本来の闇ならではのよさ」が明示されるのかというと、別にそんなものないんですよ。

サブリナが掲げる自由も平等も、特に闇である必要ないもの

とどのつまり、本作がダークさを肯定しているのはダークなのが好きなティーン向けだからであって、それ自体にメッセージ性はなく、ファッションみたいなものでした。

また、このダークさは一周回ってギャグになっているシーンが非常に多く、そういう意味でもなかなか楽しめました。

頭空っぽにして視聴しましょう。

 

いちおしキャラクター

個人的ないちおしキャラクターはブラックウッド司祭長。

差別的かつ抑圧的でムカつくのはたしかなんですが、サタンに心酔しきっている様子などがなんとも滑稽で面白い。

ゼルダといい雰囲気になるシーンや、自分が脚色した舞台劇に拍手喝采するシーンでは可愛げすらありました

そんな時折見せる好印象と見た目のクールさ故に、状況によっては頼れる味方になるのかもという期待がありましたが、シーズン2での暴挙で一線を越えた感じですね。

完全に悪役となり、そして完全にヘタレとなった。

この先どうなることやら。

 

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©Chilling Adventures of Sabrina/Warner Bros. Television/Netflix

 

 あと気になるのがハービー。

魔術と関わったばかりに大切なものを失ってばかりで、とにかくかわいそう。

回を増すごとに目から精気が失われてゆきます。

ハンターの家系だということもあるし、今後、一番闇堕ちの可能性があるのは彼だと思います。

魔女のサブリナとハンターのハービーが、なんらかの対立に巻き込まれて、ロミオとジュリエット的な展開になる、なんてのもありそうですね。

 余談ですが、そろそろセイレムにしゃべってもらいたいです

 

評価:☆☆☆(5点満点、シーズン1〜2+クリスマス特別回総合)