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ブラック・ミラー『1500万メリット』感想|眠れる大衆は夢を食む

『1500万メリット』

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©Black Mirror/Zeppotron/House of Tomorrow/Netflix

 

あらすじ

近未来と思われる世界。

人々は管理社会に置かれ、ランニングマシーンによる発電や清掃など、それぞれの役割をこなして得た「メリット」と呼ばれるポイントを、アバターの服など「本物ではない」商品につぎ込んで暮らしていた。

退屈で束縛された人生から抜け出す道は、オーディション番組「ホット・ショット」で評価され、スターになることだけだった。

ある日、ビンガム(ビング)・マドセン青年は、発電施設の新人・アビ・カーンの美しい歌声を聴く。

彼女の歌声をこの世界で数少ない「本物」だと感じたビングは、自分の1500万メリットを使って、彼女に「ホット・ショット」の出場券をプレゼントする。

歌声が絶賛され喜ぶアビーだったが、審査員たちから思いもよらぬ不快な打診を受け、ほとんど強制に近い形でそれを受け入れる。

 

感想

オチとしては、今度はアビーの扱いに怒ったビングが番組に出場し、命を賭してこの世界を批判するが、それすらもエンターテイメントとして消費されてしまう、というもの。

前回と比べて格段にわかりやすいお話でした。

管理社会の具体的な設定や経緯は説明されませんが、伝えたいことは明白です。

本物ではなく、画面の向こうの偽物ばかりを掴まされ、与えられた仕事を淡々とこなす毎日。

そこから抜け出す唯一の道は、スターになること。

でもそのスターだって使い捨ての商品。

社会を批判する勇気ある人だって「ガス抜き」という商品。

ちょっと品がないくらいシンプルな現代の風刺です。

ただ、ちょっとだけ設定にごり押し感があるかなと思います。

本作では、「スターになるという夢を見せて国民を上手く洗脳し、現状の問題に目覚めさせないシステム」が描かれていますが、そもそもの舞台が「洗脳から目覚めたところで、どっちにしろ問題を押し付けられ、逃げられない世界」なので、洗脳から目覚める・目覚めないというポイントの重要度が微妙に伝わってこない。

そこらへんはちょっと惜しいなあと思いました。

「レジスタンスみたいな組織があるけど周りからは馬鹿にされてる(評価が変われば脅威になり得る)」みたいな描写があってもよかったのでは。

ところで、「ホット・ショット」は完全に「ゴッド・タレント」のパロディですよね。

あの番組嫌いじゃないですけど、たしかに熱気の中に一種の下品さというか、狂気を感じる時があります。

それ自体が悪いわけではないと思いますけどね。

 

評価:☆☆☆(5点満点)

 

次回はこちら↓

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