『ターミネーター:ニュー・フェイト』感想・評価|思ったより面白かった
興行的にはなかなか振るわないらしい本作。
僕もあまり期待せずに……ていうか電車が止まったので時間を潰すために観にいきましたが、開けてびっくり、結構面白かったです。
ストーリーは骨太でメッセージ性があるし、画面が暗いと批判されていた後半のアクションも、かなりスリルがあって興奮しました。
『ターミネーター・:ニューフェイト』
©Terminator: Dark Fate/Paramount Pictures/Skydance Media/20th Century Fox/Tencent Pictures/Lightstorm Entertainment/TSG Entertainment
監督:ティム・ミラー
キャスト:
リンダ・ハミルトン アーノルド・シュワルェネッガー マッケンジー・デイヴィス
ナタリア・レイエス ガブリエル・ルナ etc.
概要
『ターミネーター』シリーズ第6作。
シリーズの生みの親であるジェームズ・キャメロンが製作総指揮として復帰し、最高傑作『ターミネーター2』の正当な続編として製作された。
本作を以て『ターミネーター3』『ターミネーター4』『ターミネーター:新起動/ジェニシス』は正史ではなくなった。
※ネタバレ注意
あらすじ
サラ・コナーと息子のジョンが、未来から来たターミネーター「T-800」と共に人工知能「スカイネット」の誕生を防ぎ、世界の破滅を阻止してから3年後。
浜辺で休暇を楽しんでいたコナー親子の元へ、かつて共闘し、消滅したターミネーターとは別のT-800が現れ、無情にもジョンをターミネートしてしまう。
月日は流れ、2020年・メキシコ。
新たなターミネーター「REV-9」が未来から送り込まれ、ダニー・ラモスという少女の命を狙う。
そこへ、同じく未来からやってきた強化人間・グレースが現れ、REV-9を退け、ダニーを逃がそうとする。
彼女によると、ダニーは未来で起こる人類と機械の戦争における重要人物で、ダニーを守り抜くことが自らの使命であるという。
REV-9の追跡と猛攻は留まるところを知らず、苦戦するグレースだったが、そこへ壮年の女が現れ、彼女に加勢する。
その人物こそ、かつての英雄・サラ・コナーだった。
登場人物
サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)
未来で人工知能「スカイネット」と人類の戦争が起こった際、人類の救世主となるジョン・コナーを身ごもった女性。
かつて未来から送り込まれたターミネーターに命を狙われたが、それを退け、スカイネット誕生を阻止することに成功した。
現在は凶悪犯として指名手配されているが、謎のメッセージから新たなターミネーターの出現を知らされ、ダニーたちの前に現れる。
ダニエラ・「ダニー」・ラモス(ナタリア・レイエス)
歴史が書き換えられ、スカイネットの代わりに人工知能「リージョン」が台頭した未来で重要人物となる女性。
REV-9に父と弟を奪われた上、自身も命を狙われ、否応なしに運命に巻き込まれることとなる。
サラは新たな救世主を身ごもるのが彼女だと予想するが……。
グレース(マッケンジー・デイヴィス)
ダニーを守るために未来から送り込まれた強化人間。
驚異的な身体能力を誇るが、短時間で任務を遂行する前提でデザインされているため持久力が低く、水や特定の医薬品を摂取しないと活動不能に陥ってしまう。
REV-9(ガブリエル・ルナ)
ダニーを抹殺するために未来から送り込まれた新たなターミネーター。
骨格と液体金属の双方を用いて設計されたハイブリッドで、従来の戦闘能力や変身能力に加え、二体への分離や高度なハッキングが可能。
T-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)
見た目は同じだが、かつてサラとジョンを守り、溶鉱炉に沈んでいったターミネーターとは別のT-800。
スカイネット消滅後もジョン抹殺の指令を遂行すべく活動を続け、成功した個体。
あのシーンさえ許せれば秀作
一つの作品としてはわりと秀逸なデキだと思います。
しかし、冒頭で描かれるジョン・コナーのあっけない最期については、『ターミネーター2』の感動的な結末をなかったことにしかねないものであり、シリーズを愛しているファンの大部分には受け入れ難いものがあるでしょう。
ただ、「ジョンの死を無駄にしない」という言葉が最後まで重要なテーマの一つとなっていることや、ジョンを手にかけたT-800の贖罪の物語がていねいに造形されていることで、全体としては衝撃の展開をきちんと活かした作品としてまとまっているとも感じました。
それを踏まえた上で、ジョンの犠牲を許せるかどうかが各々の評価に直結しそうな気がします。
ちなみに僕はギリギリ許せました。
本当にギリギリですけど。
元祖・戦う女の一人、サラ・コナー
強化人間のグレースもクールでスタイリッシュでかっこいいんですが、僕としてはサラがダントツでかっこよかったです。
グレースの横で「青二才が」みたいな顔してロケットランチャーやらなんやらをぶっ放しまくる爽快感がたまんない。
やっぱり、なんだかんだで『ターミネーター』の主役はサラなんだなあ、という感じです。
後半、もうちょっとド派手な活躍をしてもよかったかなと思いましたが、十分満足できました。
時代は変わる、機械も変わる
本作では、サラとグレースの大活躍に加え、新たな救世主を身ごもる母親かと思われたダニーが、実は救世主その人だったという展開が用意されています。
「女性(やマイノリティ)が中心となって世界を救ったりだってするんだよ!」という、旧作以上に新時代の価値観にアップデートされた映画です。
といっても行き過ぎたポリコレということはなく、いる意味ないと聞いていたT-800も後半がっつり貢献していて、個人的にはいいバランスだと思いました。
さて、そのT-800の描き方がなかなか興味深かったです。
ジョンを手にかけた後、彼は少しずつ自分自身の意思と良心に目覚め、人間として生き、暖かな家庭を持つにまで至ったことが明かされます。
なかなかすごい設定ですよねこれ。
これについても賛否両論分かれそうですが、僕としてはアリです。
本シリーズのテーマは「機械のいい面と悪い面」「運命は自分で切り拓く」の2つだと思うんですが、それらがスムーズに同化し、実存の物語として完成していることに美しさを感じました。
おなじみのサングラスをはめようとして、「やっぱりないほうがいいな」と言わんばかりに外すところが特によかったです。
まとめと補足
中国で大ヒットでもしない限り、予定されていた続編はなくなりそうですが、作られる意味のあった一作だと思います。
全体的に褒めましたが、よく考えると「やっぱりポリコレ色強すぎかも」とか「矛盾・疑問点多いかも」みたいな不満は膨らんでこなくもないです。
また、僕が『最後のジェダイ』に耐えられなかったように、本作の根本的なスタンスに耐えられない『ターミネーター』ファンもいっぱいいると思います。
あくまで僕個人としては面白かったということで、爽やかに終わりたいと思います。
評価:☆☆☆☆(5点満点)