『アベンジャーズ エンドゲーム』感想(構造編)
友達のおかげでまた初日に観ることができました。
が、なにぶんあまりネタバレに加担したくないのでしばらく時間を置いていました。
そろそろいいかなと思ったので、感想解禁です。
読まれる方は自己判断で!
『アベンジャーズ エンドゲーム』
©Avengers:Endgame/Marvel Studios
感想
絶望体験型映画
前作ラストの絶望感も物凄いものがありましたが、今作序盤の絶望感はその比ではありません。
メタなことをいうと、前作でヒーローたちが次々と消えていった展開は、彼らが後で蘇ることが確定しているようなものだったので、なんだんかんだ「ストーリーの起伏」の領域にしっかり収まっていました。
しかし今作の展開は、既存のストーリーの枠からはみ出すくらい実験的かつ挑戦的で、絶望の種類が違う。
インフィニティ・ストーン消滅済。
サノス死亡。
それから5年の月日が経過。
しょっぱなからこの三連コンボを叩きつけられた観客はこう思わされます。
「どうなっちゃうんだこれ……」と。
正直、こういうひねりのある映画になること自体は予想できなかったわけではないです。
単にサノスを倒して終わり、なんて勧善懲悪な映画、誰も考えていなかったと思いますし、求めてもいなかったと思いますから、むしろ期待通りですらあります。
ただ、そういうひねりが、ある意味「解決編」である本作においてさらに絶望を上書きするために使われるというのは予想外でしたし、ひねり方があまりにもエゲつなくて、その後のお話と着地点が全然読めなくなったのには驚愕しました。
ある程度の推測はできても、イメージが固められない。
確信が持てない。
だって、前例がないから。
未知のヒーロー映画の中を、観客もキャラクターたちと共に手探りで進むことを余儀なくされる新感覚の「絶望体験型映画」。
よくこんなことやったなと思います。
アクション映画にあらず
で、未知の世界へ放り込まれたキャラクターたちが、何においてその先へ進むのかというと、バトルでもアドベンチャーでもなく人生なんです。
愛する者が失われた世界で、ある者は悲嘆にくれ、ある者は怒りを宿し、ある者は過去を忘れようとしながら、前に進もうとあがいています。
我々は、ヒーローの敗北というものを何度も目にしたことがあります。
しかし、ここまで圧倒的な敗北はほとんど例がありません。
はじめて出会うリアルで決定的な描写は、まるで幻想の終わりを告げているようです。
「失ったものはいつか取り返せる」という幻想の終わりを。
人類の半分が消え、荒涼とした街並みも、芽吹いた自然も、それはそれで美しい。
新たに得た幸せだってある。
現実を受け入れよう、そして前に進もう。
人生ってそういうものだから。
この映画はそこまで突き詰めます。
その上での再結集。
その上での再始動。
人生の厳しさをいつも以上にシビアに再確認した上で、それでもやっぱり失ったものを取り返そうという反撃開始。
当然、そんな掟破りには大きな犠牲が伴う。
だって、人生は甘くはないのだから。
この作品は、ある意味アクション映画ではないんです。
バトルもアドベンチャーも、もちろん最高級に素晴らしいものなんですが、あくまで人生を巡る物語の一部なんです。
単にアクションシーンの割合がかなり少ないことからもこのコンセプトが見て取れます。
MCU総決算
アベンジャーズをお祭り的な集合映画とだけ捉えている方がたまにいます。
具体的には「なんでもかんでも、とりあえず集めればいいってもんじゃないよ」と彼らは言います。
とんでもない!
MCUは綿密に計算され、効果的に絡み合った、一つの大きな物語です。
ある意味その証明となるのが本作です。
上で書いたように、この映画は人生を巡る物語であり、いつにも増して人間ドラマです。
11年続いた一大シリーズの節目を、そういう方向性でまとめられるのがマーベル・シネマティック・ユニバースなんです。
単体作品と集合作品の両方で紡がれてきた多くのキャラクターたちのドラマが、意味を持って収束し、帰結する。
そんな偉業をついにやってのけたことに、称賛を送らずにはいられません。
また、ドラマだけでなく、小ネタの要素においても全ての作品が繋がっているというのもお見事。
映画史に残る事件だと思います。
じっくりという贅沢さ
この偉業を実現するにあたって、かなりじっくり時間が使われているのも注目したい本作の特徴です。
前半のテンポはかなり緩やかで、削ろうと思えばもう少し削れたと思いますし、また、一見さんのためにもう少し説明に時間を割くこともできたと思います。
しかしそれをやると、リズムが変わり、トーンが変わり、全体の深さと細やかさが失われて、本当に描きたいものが描けなくなってしまいます。
だからクリエイターたちは削らないことにし、説明しないことにしました。
ここまでついてきた僕たちが、最後までついてきてくれることを信じて。
ここまでついてきた僕たちへのご褒美として。
MCUだからこそできる、とんでもなく贅沢な映画だと思います。
ストーリー・キャラクター編へ続く↓