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最高傑作『ブロリー』はストーリーもすごいって話

ドラゴンボール超 ブロリー

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©ドラゴンボール超 ブロリー東映アニメーション集英社鳥山明

 

監督:長峰達也

原作・脚本・キャラクターデザイン:鳥山明

キャスト:

野沢雅子 堀川りょう 中尾隆聖 久川綾

島田敏 宝亀克寿 水樹奈々 杉田智和 etc.

 

概要

超人気漫画(アニメ)『ドラゴンボール』シリーズの劇場版第20作。

過去にオリジナル映画3作品に登場し、現在でも根強い人気を誇る悪役「ブロリー」を、原作者である鳥山明がリメイクし、新たなストーリーを用意した作品。

過去の映画作品とは繋がっておらず、時系列上はテレビアニメ『ドラゴンボール超』の続きにあたる。

世界中で大ヒットを記録し、全米初登場1位を達成した。

 

あらすじ

41年前。

戦闘民族サイヤ人は、圧倒的な武力と戦闘力を誇るコルド大王、及び彼の軍を引き継いだ息子のフリーザに支配されていた。

サイヤ人の君主ベジータ王は、自身の息子ベジータ四世フリーザを打倒し、再びサイヤ人の時代を到来させることを夢見ていたが、時を同じくして生まれたブロリーが、天才であるベジータよりもさらに強大な才能を秘めていることを知り、嫉妬に狂う。

ベジータ王はブロリーを辺境の惑星バンパへ追放し、ブロリーの父・パラガスがそれを追う。

パラガスはベジータ王への復讐を誓うが、宇宙船のエンジンが故障し、息子ともどもバンパから出られなくなってしまう。

一方、フリーザ軍の不穏な動きを察知していたサイヤ人バーダックは、息子のカカロットを遠い惑星・地球へと逃がす。

バーダックの予感はあたり、サイヤ人の住む惑星ベジータフリーザの攻撃によって消滅してしまう。

時は流れ、現在。

ブロリーとパラガスはフリーザ軍のチライレモによって救出される。

ドラゴンボールを求めて地球へと向かうフリーザから、ベジータ王の息子が生きていることを聞かされたパラガスは、復讐を実行に移そうとする。

 

※ネタバレ注意

 

登場人物

孫悟空カカロット(CV.野沢雅子

いわずと知れた我らが主人公。

ドラゴンボール超』で描かれた「力の大会」で、別の宇宙の強者たちと手合わせしたため興奮を抑えきれずにいる。

今作では独特の訛りが少なく、また言動もある程度知的である。

 

ベジータ(CV.堀川りょう

我らがプリンス・オブ・プライド。

劇場版では毎度の如くカマセにされる伝統を打ち破り、ブロリーと激闘を繰り広げ、大活躍する。

今作でフルネームがベジータ四世であることが判明。

 

フリーザ(CV.中尾隆聖

我らが悪の帝王。

力の大会では一時的に悟空たちと組んだが、「悪事を辞めるつもりはない」と言った通り、今回は再び悪役として登場。

ある願いを叶えるため、地球のドラゴンボールを奪おうとしている。

作中で最も邪悪なヴィランとしての存在感とギャグを両立させるという奇跡のポジションを務め、正直『復活のF』の時よりも見どころ満載。

 

ブルマ(CV.久川綾

力の大会編では出番がほぼなかったため、久しぶりのまともな登場。

ある願いを叶えるため、再びドラゴンボールを集めている。

声優の鶴ひろみ氏が惜しくも亡くなってしまったため、今作では久川綾氏が代役を務める。

 

ブロリー(CV.島田敏

タイトルロール。

強大すぎる潜在能力ゆえに、惑星ベジータを保育カプセルごと追放されたサイヤ人

その強さを抜きにすれば、悪魔を自称した旧作とはまったくの別人であり、穏やかで純粋。

しかし、友達を傷つけられたり、父の宿敵を前にすると激昂し、制御が利かなくなる危うさを持つ。

文明のない小惑星で父と二人きりで育ったため、常識を欠いている。

 

パラガス(CV.宝亀克寿

ブロリーの父親。

息子を追放したベジータ王への恨みに燃える。

復讐と保身を第一に考えるエゴイストで、ブロリーを激しい痛みを伴う制御装置でしつけるなど、歪んだ教育方針をとっている。

ベジータ王の息子が生きていることを知り、息子をけしかけて攻撃させる。

 

チライ(CV.水樹奈々

今作のキーパーソン。

フリーザ軍の女性兵士。

いかにも鳥山明チックな気が強い少女で、直情的で仲間思い。

ブロリーの純粋さに触れ、彼を束縛するパラガスを嫌悪している。

 

レモ(CV.杉田智和

チライと組んでいるフリーザ軍の兵士。

酸いも甘いも噛み分けた老兵だが、ブロリーのために危険を冒すチライに感化されて少しずつ熱くなっていく。

 

まさかの最高傑作

鳥山明といえば、自分の生み出した作品やキャラクターに対して驚くほどドライというのが有名でした。

だからこそハリウッド版『DRAGON BALL EVOLUTION』のデキに怒りのコメントを出した時にはビックリしましたし、嬉しくなりました。

その後、映画の脚本を書いたり、前日譚を描き下ろしたり、テレビアニメにも原案として関わったりと、せきを切ったように『ドラゴンボール』を愛するようになった鳥山明氏。

しかし、その活動自体の評価は賛否両論で、旧来のファンたちの一部から「原作者が一番のにわか」だなんて言われたり。

僕自身も、『復活のF』にはちょっとがっかりだったし、『ドラゴンボール超』も基本的には好きだけれど気になる点が結構ありました。

なので、正直今作にもあまり期待はしていなかったんですが、フタを開けてみればまさかの最高傑作

恐らくアニメ史上最高だと思われるバトルシーンの凄まじい作画。

壮大なスペースオペラとプロレス的なノリのよさの両方を見事に引き立てた音楽。

ぶっ倒れるんじゃないかってくらい叫びまくりの熱演。

どれも超ド級

でも、僕が一番語りたいのはストーリーとキャラクターなんです。

やっぱり鳥山明ってすげえ! って思ったんです。

 

鳥山明は天才

まず、前半でシリアスな悲劇を描いて、後半で一気にバトルに雪崩れ込むという流れが反則。

政治劇や歪な親子関係などの切実なモチーフが盛り込まれた「映画らしい映画」にしっとりと引き込まれた上で、満を持してバトルアクションで興奮させられる贅沢さはたまらない

しかも、前半で示されたカカロット(悟空)、ベジータ、そしてブロリーの運命が、ひたすらぶつかり合う後半に意味と重みを与えるという天才的な構成。

この構成にはさらにもうひとひねり仕掛けがあって、前半で、ドラゴンボールのキャラクターとしてはイレギュラーな陰湿さと息苦しさを持ったパラガスやベジータ王が中心に据えられることで、後半の悟空たちの爽やかさがそれを打ち砕き、包み込む形になっているんですね。

ドラゴンボール』の魅力とはなんなのか。

もちろん絵の魅力もありますが、そのさらに根幹にあるのは、悲劇的な運命にあるブロリーと楽しそうに戦い、ワクワクし、「また戦いたい」と笑顔で告げる悟空とその仲間たちの途方もない爽やかさ

その魅力が、爽やかでない世界という外部の領域が用意されることで、再確認されるわけです。

そしてそれが、言葉で語られるのではなく、キャラクターがキャラクターらしく、活き活きと動いた結果として、そういう風に収まっているというのがまさに天才の所業。

この映画は、悟空とチライが、爽やかでシンプルな感情で行動した結果、陰湿で息苦しい世界からブロリーを救い出す物語だともいえると思います。

また、忘れてはならないのは監督の力量

細やかで行き届いた仕事は脚本の魅力を最大限に引き出し、本作を最高傑作たらしめています。

それを支えたスタッフとキャストの魂の込め具合にも拍手を!

 

評価:☆☆☆☆☆(5点満点)

 

『ワンピース:スタンピード』についてはこちら↓

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