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『ボヘミアン・ラプソディ』感想・評価|不満も多いが傑作

ボヘミアン・ラプソディ

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©Bohemian Rhapsody/20th Century Fox/New Regency/GK Films/Queen Films

 

監督:ブライアン・シンガー

キャスト:

ラミ・マレック ルーシー・ボイントン グウィリム・リー

ベン・ハーディ ジョゼフ・マゼロ etc.

 

概要

伝説のバンド「クイーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーの半生を追った伝記映画。

ドキュメンタリーではなく、時系列などに多くの脚色が加えられたエンターテイメント作品。

現クイーンのブライアン・メイロジャー・テイラーがプロデューサーとして関わっており、企画自体は10年近く前から動いていた。

全世界で爆発的な大ヒットを記録し、延長上映や再上映が続々と決定している。

第91回アカデミー賞、主演男優賞・編集賞・録音賞・音響編集賞受賞。

 

あらすじ

70年代ロンドン。

移民の青年・ファルーク・バルサラ(後のフレディ・マーキュリー)は、自身の出自や境遇を苦にしながら、音楽にのめり込んでいた。

フレディは、ファンだったロックバンド「スマイル」のメンバー、ブライアン・メイ(ギター)、ロジャー・テイラー(ドラム)にその素晴らしい歌声を披露し、ボーカルとして加入する。

ベースのジョン・ディーコンも加わった「スマイル」は「クイーン」として始動し、圧倒的なパフォーマンスと音楽センスで世界中を魅了していく。

一方、華やかな生活の中でしだいに自身の性的指向を認めていったフレディは、最愛の女性・メアリー・オースティンとの関係に変化が訪れる。

 

感想

かなり遅くなりましたが観てきました。

クイーンは昔から大好きなバンドで、世界で一番好きなバンドは? と訊かれたらクイーンかレッチリかで迷うくらいです。

それなのに何故こんなに観るのが遅くなったのかというと、脚本に不安があったからです。

どれだけ演技・演出・音楽が素晴らしくても、ストーリーがよくあるバンド物語に収まっていそうな予感がなんとなくあって……。

結果的に、その予感はわりと当たっていました。

部分的にですけど。

愛を巡る物語としては、十二分に独自性のある素晴らしいストーリーだと思います。

ただ、バンドを巡る物語としては画一的すぎるかもしれないなあ、と。

天才の慢心とエゴイズム、それに伴うメンバー間の衝突、そして再結成。

そんなテンプレートを語るために、エゴイストな一面がありつつも、人を惹きつける魅力を持ち、シャイで気づかいができたりもするフレディをあそこまで高飛車な人物像に落とし込む必要があったのだろうか。

また、フレディ以外のメンバーも天才だという面ももっと押し出して欲しかったし、彼らの見せ場ももっと欲しかったです。

個人的には、ブライアンあたりを語り部にしてもよかったなと思いました。

あとテンポがちょっと速すぎる。

観客がクイーンを知っている、もしくはクイーンが伝説のバンドだと知っているという前提が強く意識された上でポンポン話が進み、大成功が収められていくのはいわば「あたりまえ」という描かれ方。

もうちょっと喜びを噛み締める余裕や余韻が欲しかったし、上記の人物像の記号化を抜きにしても、感情移入するタイミングがちょっと掴みにくかったです。

気になる点はこれくらいとして、素晴らしい作品であることには違いないと思います。

やっぱりこれは愛の物語ですから。

僕は『愛にすべてを(Somebody To Love)』がクイーンで一番好きな曲……というか世界で一番好きな曲なんですが、この曲が冒頭とクライマックス直前で流れる意味は、この曲こそが、フレディの人生とか苦悩とか孤独とか、そういうものを最も表している曲だからだと思うし、この映画はそういうエッセンスはしっかり掴んでいると感じます。

 

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マイノリティとしての境遇自体もそうだし、メアリー・オースティンとの別れとその後の非常に特殊な関係性は、普通の恋愛モノを見ても湧かないような、胸が張り裂けそうな切なさを宿していました。

愛しているのに、結ばれない。

結ばれないけど、結ばれている。

規格外の愛を求めるフレディ・マーキュリーという人間ならではのイレギュラー。

それを受け入れ、母のように、姉のように、妻のように彼を見守る「元恋人」メアリーに心打たれ、二人が本当に結婚していた場合の未来に思いを馳せました。

もちろん、クイーンのメンバーや、フレディの最後の恋人・ジム・ハットンの愛情にも魅せられました。

そして、さまよい続けた一人の男が、やがて大観衆の前で最高のパフォーマンスを披露する一連の流れは、極上のカタルシスです。

このラストのライブエイドのシーンは本当に圧巻で、この時には上に挙げたような文句など完全に忘れ、「フレディと別れたくない」「クイーンと別れたくない」という気持ちに支配されていました。

というわけで、なかなか批判されているまさかの続編計画も実はちょっと賛成だったりします。

 

評価:☆☆☆☆(5点満点)