バットマン&ロビン闇に堕つ|『タイタンズ』シーズン1感想・評価
DCヒーローのサイドキックたちを中心としたチーム「ティーン・タイタンズ」が実写ドラマ化しました。
ただし、登場するメンバー4人の内ティーンなのは半分だけで、故にただの「タイタンズ」ってわけです。
内容もかなりダークなのものでした。
©Titans/ Weed Road Pictures/Berlanti Productions/DC Entertainment/Warner Bros. Television
概要
DCコミックス『ティーン・タイタンズ』の実写ドラマ化作品。
バットマンの相棒、初代ロビン/ディック・グレイソンが主役を務め、レイブン、スターファイヤー、ビーストボーイなどのヒーローたちが登場する。
DCEUともアローバースとも異なる新たな共有世界「DCユニバース」の一作で、アメリカでは同名のストリーミング・サービスで配信されている。
2019年9月6日に本国でシーズン2が配信開始予定。
日本での配信日は未定。
あらすじ
かつてバットマンの相棒・ロビンとして活躍したディック・グレイソンが、ゴッサムを離れ、デトロイトに刑事として赴任してきた。
そこへ、育ての母を殺され、謎の組織に追われる少女・レイチェル・ロスが助けを求めてくる。
組織の目的は、彼女が持つ魔術的な力に関係しているらしい。
ディックはレイチェルを守るために行動を開始し、途中、炎を操る能力者で記憶喪失のコリー・アンダース、虎に変身することができる少年・ガー・ローガンと知り合い、彼らとチームを組んで組織と戦う。
登場人物
リチャード・「ディック」・グレイソン/ロビン
最も有名な初代ロビンで本作の主人公。
家族でサーカスの一員だったが、ギャングの工作で両親を失って以降、億万長者のブルース・ウェインの養子となり、彼の裏の顔であるバットマンの相棒・ロビンとして犯罪と戦ってきた。
バットマンの支配的・独善的なやり方に反発し、現在では袂を分かっている。
原作では独立後にナイトウィングと名乗るが、今作ではまだ「元ロビン」として活動している。
悪人を過度に痛めつける暴力的な衝動を持つ。
レイチェル・ロス/レイブン
父親から譲り受けた魔術的な力を持つ少女。
力は制御することができず、敵対するものを傷つけたり死に追いやったりするため、本人も恐れている。
一方で、傷ついた者を治癒することも可能。
育ての母親を殺されてから謎の組織に追われ、ディックの元へと身を寄せる。
組織は彼女の父親の信奉者たちで、彼女に父親を呼び出させることによって世界を変えることを目的とするらしい。
コリー・アンダース/スターファイヤー
派手な格好をした長身の女性。
炎を自在に操ることができ、単純な戦闘技術も高い。
記憶を失っており、自分の正体を突き止めようとしながらレイチェルを守っている。
ガーランド・「ガー」・ローガン/ビーストボーイ
虎に変身する能力を持つ少年。
元は能力者たちが身を寄せる「ドゥーム・パトロール」の一員だったが、ディックたちに着いていくことになった。
ハンク・ホール/ホーク
元アメフト選手のクライム・ファイター。
恋人のドーンと共に犯罪と戦っているが、引退を考えている。
ドーン・グレンジャー/ダブ
元バレエダンサーのクライム・ファイター。
ハンクを愛しているが、過去にディックとも関係があった。
ジェイソン・トッド/二代目ロビン
ディックの後任に収まった少年。
バットマンやディックを慕う一方で、罪無き警察官を攻撃するなどする危険人物。
ドナ・トロイ/ワンダーガール
ワンダーウーマンの元相棒。
ディックの幼馴染で、サイドキックならではの悩みに耳を傾ける良き理解者。
感想
スーパーヒーローの闇をこれでもかとばかりにリアルに、ハードに、シビアに描き出す作品! というと結構たくさんあるわけですが、今作もその内の一つです。
特にディックと彼の関係者のほとんどは、大なり小なりみんなネジが外れていて、その思いあがった私的制裁っぷりにはちょっと恐怖を覚えました。
ただ、『ウォッチメン』などのようにヒーローの危険さを徹底的に俯瞰し、風刺しているというよりは、ただただナチュラルにヒーローたちが危なっかしい作品という感じです。
故に、今作における「ヒーロー」がどの程度罪深い存在で、どの程度幸せになれるかもしれない存在なのかがコンセプトから読み取れず、着地点がわからない不安感みたいなものがずっと漂っていました。
その空気が爽快感を損なう一方で、スリルとサスペンスを妙な形でもたらしていてよかったです。
同時にスプラッタやホラーでもあり、結構怖いです。
あの『ティーン・タイタンズ』をよくこういう方向性に振り切ったなと思いました。
また、共有ユニバースの実質的な第一作にも関わらず、バットマンを始めとしたおなじみのキャラクターたちについてガンガン言及されるのも個性的でした。
「バットマンはいないのか?」だとか「バットマンと知り合い?」だとか、そういう台詞が当たり前のように飛び交っており、それがバットマンの伝説っぷりを物語っていてよかったです。
ジョーカー、ペンギン、トゥーフェイス、リドラーのバットマンヴィラン四天王も台詞やワンショットでチラッと登場したりして、「説明せずともわかるキャラクター」としての格を見せつけており、さすがだなと思いました(セリーナはたぶん普通に登場しそう)。
また、特にバットマンとジョーカーについては、単なるサービスとして存在が仄めかされるわけではなく、ディックを取り巻くドラマの一員として重要な役割を担っていました。
これは、このユニバースが原作の基礎知識を大前提とし、どんな切り口からでもストーリーを開始するつもりであることを示しています。
ライバルであるマーベル・コミックス以上にポピュラーなDCコミックス原作ならではの試みであり、成功すればかなりの強みになると思います。
さて、歴代ロビンの中で最も成熟している印象のディックですが、今作ではかなり未熟です。
必要以上に敵を痛めつけたり、ほぼ無実の目撃者の家に押し入ったりと、もっとヤバいジェイソンがいることを差し引いてもヤバい奴でした。
そんな闇堕ちロビンが、幻覚の中で、ついにジョーカーを手にかけた闇堕ちバットマンと対峙しましたが、これは果たしてどれくらい現実になりそうなことなのでしょうか。
シーズン2ではついにバットマンが本格登場するので、早く今作における彼の具体的な現状を確かめたいです。
まとめ
悪くはないんですが、個人的には、変にダークさを優先するあまりカタルシスが相当に不足していると感じ、しかもクリフハンガーで終わったのでスッキリはできませんでした。
あと、普段あまりこういうこと考えないんですが、作品の性質もあって、事件のスケールが大きくなるほどに「さすがにジャスティス・リーグ呼べや」と思ってしまいました。
シーズン2からもっと面白くなりそうな気配はするので期待しています。
余談ですが、恐らく『TITANS』と『進撃の巨人(Attack On Titan)』繋がりもあってキャスティングされたと思われる、デイックの吹き替えの梶裕貴氏が、アニメの時とは全然違う自然で繊細な演技をしていて新鮮でした。
評価:☆☆☆(5点満点)