『ジェシカ・ジョーンズ』の見所を解説!超異色ヒーロースリラー
NetflixとMCUが組んだオリジナルドラマ『ジェシカ・ジョーンズ』の見所を紹介します。
©Jessica Jones/Marvel Television/ABC Studios/Netflix
概要
『ジェシカ・ジョーンズ』は『エイリアス』などのコミックスを原作としたドラマで、マーベル・シネマティック・ユニバース(以下MCU)に含まれます。
主役のジェシカ・ジョーンズは、怪力と飛行能力(ドラマではほぼ大ジャンプ)を備えた元ヒーローで、このドラマでも一時期はヒーローを志していましたが、現在は私立探偵として活動しています。
※この記事は2016年11月18日に旧ブログに投稿したエントリーの再掲です。
感想と見所
もう本当に異色作中の異色作ですね。
正直ジェシカ・ジョーンズについては僕はあまり詳しくなくて、ルーク・ケイジの妻ということと、ある凄惨な事件を機にヒーローを引退したということくらいしか知りませんでした。
でも今回のドラマを見て、ジェシカは彼女にしかない強い個性を持ったキャラクターであり、作品もそれに応じて非常にユニークなものになっているという印象を受けました。
第一に、大前提として彼女はヒーローじゃないんですよね。
ヒーローになろうとしたけど、運悪くなれなかった女。
口が悪く、がさつで、酒飲みで、いつも疲れたような顔をしている一人の「女」。
聖人でもなければ完璧でもない……っていう描かれ方は現代のヒーローみんなそうなんですが、『ジェシカ・ジョーンズ』ではその点がさらにえげつなく押し出されています。
ジェシカはエゴも欲望もアンニュイさも全てが真に迫って触れられる「MCUで最も人間らしい人間」で、本作はそんな「人間」が織りなす地に足ついたドラマなんです。
しかも女性監督の手によるものだからか、ドラマの内容は超ドロドロ。
そして、そんなリアルでドロドロな物語でありながら、「でもアベンジャーズがいる世界」っていうのが本当に独特の位置づけで、妙な味わいがあります。
第二に、ジェシカの基本的な立ち位置が「被害者」であることも特徴として挙げられます。
ジェシカの内面には、後述する本作のヴィランに負わされたトラウマが深く根ざしていて、それがシーズン1で最も重要なテーマとなっています。
ジェシカは他人のためにそのトラウマの元凶たる男に立ち向かうのですが、その「戦う正義の味方もどきの姿」は同時に「ボロボロに傷つけられた女の姿」や「悲惨な過去と向き合う女の姿」でもあって、そっちの方がストーリーのメインなんです。
根が善人のジェシカがヒーロー足りえる気質を持ち合わせているのもたしかですが、ヒーローが「平和を取り戻す」のではなく、とある中年女性が「干渉された人生を修正する」お話が『ジェシカ・ジョーンズ』シーズン1というわけです。
で、そんな状況を作り出した本作のヴィラン、キルグレイブなんですが、めちゃくちゃ気持ち悪いです。
心理的にも気持ち悪いし、視覚的にも気持ち悪い(ルックス自体はイケメン)。
原作では通称パープルマン、本名ゼベディア・キルグレイブ(ドラマ版では通称キルグレイブ、本名は別)というキャラクターで、「ジェシカをもてあそび、ルークにボコボコにされた変態小悪党」というイメージしか僕にはありませんでした。
しかし、ドラマ版のキルグレイブはその変態性を掘り下げ、洗練させることで、本当に気持ち悪い極悪ヴィランとなっています。
ていうか今のところMCU史上ワーストのド外道だと思います。
彼の能力は声を用いて「人に命令し、意のままに操ること」。
それだけ書くと「ロキの下位互換じゃねーか」と思われそうですが、能力以前に人格がヤバいので、差別化できているどころか怖さと嫌悪感ではこちらの圧勝です。
まず、先述したジェシカのトラウマとは「キルグレイブに操られて共に過ごし、愛し合ったこと」で、それだけでもおぞましいのですが、その後もキルグレイブはジェシカを求め続けており、本編では彼女を再び手に入れることのみを行動原理とします。
しかも突発的な衝動ではなく、ガチで愛しにきているので、そのモノホンストーカー系ヴィランっぷりはなかなか強烈です。
なにより、キルグレイブは目的を果たすために用いる手段がMCU作品としては段違いでグロテスクかつ非道です。
彼の存在だけで作品のジャンルがサイコスリラーになっているといっても過言ではありません。
無敵とも思われる能力と吐き気をもよおすやり口を兼ね備える「巨悪」キルグレイブと、「探偵」ジェシカ・ジョーンズの血なまぐさい攻防を、その裏に秘められた男女の微妙な関係にも注目しつつ、ぜひ味わって欲しいです。
『ジェシカ・ジョーンズ』はその作風からして、全体にある種のそっけなさが流れているので、序盤はグっと引き込まれる人とそうでない人がいるかもしれません。
ですが、心理戦が佳境に入る中盤からの怒涛の展開は、グロ耐性さえあれば万人が楽しめるので、もし序盤で合わないと感じても、長い目で観賞を続けてみてください。
評価:☆☆☆☆(5点満点、シーズン1)