『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』感想(ストーリー・キャラクター編)
下記リンク先記事の続きです
『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』
©Avengers:Infinity War/Marvel Studios
概要
キャスト:
ロバート・ダウニー・Jr クリス・ヘムズワース マーク・ラファロ
クリス・エヴァンス スカーレット・ヨハンソン ベネディクト・カンバーバッチ
ジョシュ・ブローリン etc.
あらすじ
帝王・サノスが動き始めた。
彼の目的は、無限の石・インフィニティ・ストーンを全て揃え、宇宙の生命を半分に減らすこと。
すでにパワー・ストーンを手に入れたサノスは、ソー率いるアスガルド人たちを襲撃し、スペース・ストーンをも奪取。
さらにマインド・ストーンとタイム・ストーンを手中に収めるため、地球へ兵を送り込む。
サノスに敗れ、地球に帰還したハルク/ブルース・バナーは、タイム・ストーンを所持するドクター・ストレンジ/スティーブン・ストレンジに警告を発し、ストレンジはアイアンマン/トニー・スタークを呼び寄せる。
一方、政府から隠れてヒーロー活動を続けるキャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャースたちは、マインド・ストーンを持つビジョンたちと合流。
満身創痍のソーはガーディアンズ・オブ・ギャラクシーに救助され、打倒サノスを決意する。
※この記事は2018年6月30日に旧ブログに投稿したエントリーの再掲です。
予備知識
インフィニティ・ストーン
宇宙の始まりと共に誕生した、万物の本質を司どる六つの石。
強大なエネルギーを宿し、それぞれ特殊な能力を有する。
全てを集めることで、どんな願いも叶えられるとされる。
スペース・ストーン(テッセラクト)
空間を司る。
瞬間移動が可能。
オーディンが地球にこの石を落としたことが、フェイズ1におけるだいたいの事件の元凶。
紆余曲折を経て再びアスガルドに保管されたが、ロキが持ち出した。
コズミック・キューブ、四次元キューブとも訳される。
リアリティ・ストーン(エーテル)
現実を司る。
現実改変が可能。
拡大解釈すればそれだけでなんでもできてしまうはずなので、恐らく限度がある。
ダークエルフのマレキスがこの石を使って宇宙を闇に戻そうとしたが、ソーが阻止し、シフたちがコレクターに預けた。
パワー・ストーン(オーブ)
力を司る。
触れた物の連鎖的な破壊や持つ者の強化が可能。
惑星すらも粉砕できるが、選ばれた者以外が触れると使用者も死亡してしまう。
ロナンがこの石を使ってザンダー星を滅ぼそうとしたが、ガーディアンズが阻止し、ノヴァ軍に預けた。
マインド・ストーン(セプター)
精神を司る。
精神操作が可能。
また、潜在能力を引き出すことも可能で、ワンダとピエトロに特殊能力を与えた。
ロキに貸し出された杖の先に埋まっていたところをヒドラの手に渡り、現在はビジョンの額に埋まっている。
タイム・ストーン(アガモットの眼)
時間を司る。
時間操作が可能。
魔術師の間で代々受け継がれ、現在はドクター・ストレンジが所持している。
ソウル・ストーン
魂を司る。
詳細不明。
感想
冒頭の絶望感
オープニングの緊張感がすごくよかったです。
無音のロゴから入り、救難信号のサイレンが静かに鳴り響く。
『シビル・ウォー』と同じか、それ以上に不気味でシリアスな始まり方です。
大方の予想通り、『ラグナロク』を生き延びたアスガルド人たちは、サノスたちの襲撃によりほぼ壊滅していました。
これは正直、評価が分かれるところです。
「国は土地ではなく民だ」と言って移民を決意したソーの覚悟が成就しないと、『ラグナロク』のテーマが無駄になってしまうような気がして……。
まあでも、一本の作品のテーマを踏みにじるくらいが、サノスのヤバさを演出するのにはちょうどいいのかもしれません。
なんにせよ絶望感そのものはすばらしいです。
サノスたちとソーたちのやりとりの間、宇宙船のハッチがずっと開きっぱなしなのもすごくいいです。
不安感と、宇宙の冷たさみたいなものが感覚的に伝わってきます。
不意打ちしてきたハルクを逆にボコボコにしてあっという間にK.O.するサノス。
ハルクバスターや半覚醒したソーに負けたりして、すでに無敵の印象は薄れつつあったハルクですが、それでもパワーの代名詞である彼が一方的にのされてしまう様はインパクト大です。
サノスの殴り方が完全に「頭のいい人の殴り方」。
実に無駄のないフットワークで、彼がフィジカルだけでなくロジカルな強さを兼ね備えていることが見て取れます。
いや、むしろそれがメインなんだな。
さらに重要人物が二人も死亡して、絶望ここに極まれりといった感じです。
余談ですが、もしスペース・ストーンを旧アスガルドに置いたままにしていたら、ヘラVSサーターVSサノスの三つ巴になっていたんでしょうか。
あと、そもそもサノスは何故このタイミングで急進的に動きだしたんでしょう。
オーディンが死んだからかな?
そこらへんの事情にも興味があります。
悩めるトニーと悟ったストレンジ
ついにタッグを組んだトニーとストレンジ。
トニーを演じるロバート・ダウニー・Jrにも、ストレンジを演じるベネディクト・カンバーバッチにも、独自の空気を創り出せる超個性派俳優というイメージがあるので、この二人が同じ画面に映っているだけで、いい意味での違和感がすごい。
二人ともシャーロックだし。
科学と魔法の立場に立って対立するのかと思いきや、そういう類の論争は一切なく、普通に性格の不一致、というか同族嫌悪で対立する二人。
しかし、ストレンジの方が若干大人ですね。
これは性格の域を超えた思想のレベルでもいえることで、同じ現実主義者でも、不安と責任感の結果として使命に縛られているトニーと、明確に使命を受け継いでおり、もう少しマキャベリな構え方ができるストレンジとの微妙な違いが面白い。
トニーがMCUの主役たる所以を感じさせると共に、ストレンジのMCUにおけるドラマ的ポジションが綺麗に発掘されていて気持ちいいです。
あと嬉しかったのは、サノスがトニーのことを自分と同じ「知識に呪われた男」として認識していたこと。
主役とラスボスのそういう繋がりは本当に燃えます。
たしかに二人とも、平和を願い、その平和が続かないことをわかってしまうからこそ、犠牲を伴う行動をしてきた男。
ただ、それでもサノスとは異なるから、トニーは人を傷つけたりしないわけで。
本作のラストで、懸念し続けてきた最悪のシナリオがついに実現してしまったトニーは何を始めるのでしょう。
ソーの物語
本作の主役を挙げろと言われたら、トニー、サノス、ガモーラ、そしてソーだと思います。
ソーはこれまで掘り下げが難しいキャラクターだったと思います。
トニーのように感情移入できる要素がてんこ盛りなわけでも、キャップのように理想を客体化した存在として割り切れるわけでもない。
一個人としての人格よりも、MCUの世界観を広げる役割、最強のアベンジャーとしての役割、カルチャーギャップで笑いをもたらす役割の方が大きく、ちょっと舞台装置よりの存在でした。
しかし『ラグナロク(バトルロイヤル)』と本作を経て、彼の物語に一本の線が見えてきました。
ソーの物語は、「失う物語」。
母を失い、恋人を失い、父を失い、姉を失い、故郷を失い、親友を失い、弟を失い、それでも立ち向かい続ける戦士の物語。
それをふっと理解した時、すごく哀しくなりました。
似たような境遇を持つガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々と出会えたのは運命なのかも。
ていうか、このままガーディアンズに入っちゃえばいいんじゃないかな。
戦闘についてのあれこれ
ニューヨーク戦
MCU初の、仲間割れ以外でのタッグマッチらしいタッグマッチ。
前の記事でも触れましたが、個人的には、チタウリ軍団やウルトロン軍団を相手にするよりも、こういう戦いの方が断然好きです。
市街地をビュンビュン横移動する流れもスピード感と迫力があってすばらしい。
ちょっと『マン・オブ・スティール』のファオラ戦を思い出しました。
我らがスパイダーマンが飛び入り参加するのも最高。
一つだけ気にくわないのは、アイアンマンのスーツ装着シーン。
ナノマシンの導入は「ついにここまできたか!」って感じですけど、個人的には、装着時だけはもうちょっとメカっぽい「ガシャンガシャン」した感じが欲しかった。
上でも書いた魅力に加え、キャップの登場でもう、鼻血吹くかと思った。
わかってる! わかってるよルッソ兄弟!
キャップが、ワンダたちが完全に危機一髪の時ではなく、ちょっと敗戦濃厚かなってタイミングで現れるのもいい。
ご都合感が薄くなるし、なんというか、「地に足ついた頼れる男感」が出ていると思います。
タイタン戦
サノス側はサノス一人だけですが、インフィニティ・ストーンの能力が多彩なので、実質タッグマッチのようなもの。
息もつかせぬ連携合戦に心躍ると同時に、それぞれの想い、特にトニーとストレンジの信念に熱くなりました。
ワカンダ戦
ソーの降臨でもう、鼻血吹くかと思った(二回目)。
わかってる! わかってるよルッソ兄弟!
本作はこのシーンのために逆算して作っている節があると思います。
それを感じさせながらも、なおかっこいいんだからズルいよ。
前振りの割には、バッキーと陛下がほとんど目立たなかったのが残念。
次作に期待です。
評価:☆☆☆☆☆(5点満点)
サノスについての感想・考察はこちら↓
『エンドゲーム』についてはこちら↓